コロナ禍の悲劇は「福祉的な強力なサポートが必要」 資金の融資・貸付だけでは解決しないケースも

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

「大阪府の独自基準」について

この連載をお読みくださる方は、関西にお住いの方も多くいらっしゃると思いますので、大阪の状況についても、考えてみたいと思います。

大阪府の緊急事態制限解除の独自基準は、7日連続で①新規感染者の直近7日間の平均が300人以下②重症病床使用率が60%未満、のどちらかを満たした場合とされていますが、これは、本来は、両方を満たした場合、とするべきだったと思います。

どちらかを満たしていればよい、ということですと、極端なことを言えば、「新規感染者が300人以下だったら、重症病床使用率が100% でも解除することがあり得る」、「重症病床使用率が60%未満だったら、新規感染者が2000人いても、解除することがあり得る」ということになってしまいます。それはやはり、おかしいですよね。

結果として、国の基準よりも緩い基準になってしまっていることにも疑問があります。もちろん、いろいろな分野の政策において、自治体が、国の設定した基準と異なる基準を設けるということは、実際にあることなのですが、それは、自治体の住民のために、明確にプラスになる方向で行われるからよい、ということになります。

「上乗せ・横出し基準」といいますが、例えば、自治体が独自の財源から負担して、補助金の額を上乗せする、子どもの医療費を無償にする、教育カリキュラムを増やす、介護保険の給付対象外サービスや利用限度額以上のサービスを提供する、環境法の分野で国の法令が規制対象としていない汚染原因物質や汚染源を、新たに規制するなど、例はたくさんあります。

一方で、今回の「緊急事態宣言の解除の基準を緩める」ことは、住民の感染拡大のリスクを高める、住民にマイナスになることを、やってしまうことになります。府が基準を緩めることになった理由は、緊急事態宣言による飲食店などの経済への影響を考慮して、ということだと思われますが、上述したように、感染拡大や医療の状況が十分に改善しないうちに解除すると、再び感染が拡大し、結果として経済へのダメージが却って大きくなる、という場合もあります。解除基準を緩めることが、経済へプラスになるとは必ずしもいえません。

もちろん、自治体独自の熱意溢れる果敢な取り組み姿勢は、大いに評価されるべきものだと思います。

  ◇   ◇   ◇

最後に、懸念していることをもうひとつ。

お話を聞くと、高齢者の中には「新型コロナに感染すると重症化するし、病院や周りの人たちに迷惑をかけることになってはいけないから、家に籠っている。」という方が多くいらっしゃいます。けれど、家に籠っていると、もともと元気な方でも、心身が弱っていき、深刻な状況に陥ることがあります。高齢者の方は、尚更です。新型コロナウイルスを避けようとするあまり、むしろ、心身の健康状態を悪化させてしまうことになります。

ぜひとも、感染防止策を講じながら、お散歩にいっていただく、電話やオンラインでご家族やお友だちと交流していただく等を、積極的にやっていただき、周囲の方や地域の方も、気配りをお願いしたいと思います。

春はすぐそこです。

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