顔も体もキズだらけ「きっと野良では生きられない」長毛の猫を保護 今ではおっとり、のんびり幸せ生活

渡辺 陽 渡辺 陽

埼玉県に住む村上さんは、何匹もの猫を保護して自分で飼ったり、譲渡したりしている。家の近くの公園で見つけた猫は、いままで保護した野良出身の子とは違っていた。明らかに元飼い猫か迷い猫で、傷だらけ。このまま過酷な外の環境では生きていけないと思われた。

顔が腫れている長毛種の猫

2016年6月12日、埼玉県に住む村上さんは、家の前の公園で左頬が腫れた猫をみつけた。明らかに怪我をしているため状態を見ようと近づくが、近づくと逃げてしまった。お腹が空いているのか、ごはんを持っていくと食べるのに、警戒心はマックス。捕獲まであと一歩のところで公園の大きな倉庫の下のほんのわずかな隙間に逃げ込んでしまった。その後何度のぞきに行ってもまったく姿を現さず。翌日は一日雨、どこか別のところへ避難したのか気配もなかった。

3日後、黒猫に追いかけられて駐車中の車の下に逃げ込むところに遭遇。頬の腫れは3日前より引いていたが、傷跡がはっきり見て取れた。保護を試みるも民家の敷地内を逃げ回るためなかなか思うように手を出せず、最終的に協力者と3方向からはさみうちして、直接捕まえた。

猫を追いかけていた黒猫は、この時協力してくれた人が可愛がっている、TNRした外猫だった。

顔も体も傷だらけ、ひとりぼっちで生きてきた

猫の頬の傷は咬傷だった。脚にも咬傷の痕があり、何度となく傷を負っていたようだった。短足長毛の特徴から考えて、ペットショップにいそうな子。体重は1.5kg、生後半年くらいだった。

「迷子なのか捨てられたのか、根っからの野良猫ではないと思いました。性格も大人しくて、とても外で生き延びられそうな子ではなく、ケガの治療も兼ねて保護することにしました。その後、迷い猫の捜索願いが出ていないか問い合わせてみましたが、該当はありませんでした」

長い間ひとりぼっちで逃げ回って生きてきたようで、人間も怖いし、猫も怖い。少しの物音でもビクビクして、すぐに大きな猫が入れない隙間に逃げ込むような暮らしをしてきたことが伺えた。長い被毛は汚れきっていて、顔も傷と流血のあとで真っ黒。とても怯えた様子で、見ていてかわいそうになるほどだったという。

野良感ゼロのおっとりぱんくん

脱水症状もあったので抗生剤と消炎剤と点滴をしてもらったが、深い傷のせいか食欲はあまりなく、保護から3日以上排便もしなかった。ほぼ動かずじっとして、時が過ぎるのを待っているかのように見えた。それでも本来は甘えたい子なのか、数日してから近づくと、にゃーーと声を出し、抱っこするとゴロゴロいうようになった。体型のせいもあるのかあまり俊敏に動くタイプではないようで、まったりとした動きがなんとも可愛らしかった。

迷子の可能性もあったため、保護してからしばらくは預かり状態だった。仮の名は毛色からサバちゃんにした。その後、捜索している人が現れなかったのでインスピレーションから「ぱんくん」と名付けたという。

保護からしばらくして夜中に呼吸がおかしいことに気づき、夜間病院へ急行。検査の結果、FIP(猫伝染性腹膜炎)の可能性があると診断を受けた。翌日かかりつけの病院でも診察してもらったが確定には至らず。現在もFIPの発症は認められず、元気に過ごしているという。

嘔吐物の中にマンソン裂頭条虫症と呼ばれる寄生虫がいたり、傷の後遺症で涙が止まらず、今でも目の周りが汚れてしまったり、腎臓の病気が見つかったり、なにかとトラブルが多い子だが本にゃんは平常心。いつも床に転がってのんびり過ごしている。

「今までの保護猫と違い野良感がまったくなく、よく今日まで生きてこられたねと思う子です。体型も運動神経の鈍さも私の知っている猫とは違う。新たな発見が楽しいです」

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