新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、女性は男性より多くの不安を感じているという調査結果を、築地本願寺(東京都中央区)がまとめた。調査では、18~29歳の女性の4人に1人が「死にたいと思うことがあった」と回答するなど、コロナ禍の人々の深刻な心理状態が浮かび上がった。調査した築地本願寺のトップ安永雄玄宗務長(66)は「だれでも死にたいと思うことはある。お寺は門を開いており、寄り添う人はいる」と悩みを寄せるよう呼び掛けている。
≪調査は不安を抱えたり、自殺したりする女性が多いとされることから、築地本願寺が2020年11月にインターネットで行った。対象は全国の男女3600人で、女性に対する調査をより深いものとするため、サンプル数は男性1200人に対し、女性は倍の2400人とした≫
-そもそも、なぜこのような調査をしようと思ったのですか?
安永宗務長「コロナ禍の時こそ、お寺が何かしないといけない、お寺は人々の役に立つべきと考えています。マクロな視点で人々の考えを知ろうと今回の調査を実施しました」
≪調査では女性がより強い不安を感じているという結果が浮き彫りとなった。「コロナ禍において、具体的にどのような不安を感じましたか」という質問で「家族の肉体的健康が損なわれるかもしれない不安」「大切な人、身近な人が死ぬかもしれない不安」という回答は、女性が男性より10ポイント以上高かった≫
-「コロナ禍の不安を受けて、日々の暮らしの中でどのような気持ちや思いが高まるようになりましたか」という質問では、18~29歳の女性27.3%、男性24%が「死にたいと思うことがあった」と答えています。
「コロナ禍の環境変化が人々の心に大きな影響を与えていると感じています。どんな人でも環境やメンタルの変化など、何かの拍子に死にたいと思うことはあると思います。自死願望はだれでも起こりえます。そうした人々を支えることが、現代における宗教、伝統仏教の果たすべき役割だと思っています」
-今回の調査は新型コロナウイルスの国内感染が確認されて10カ月ほどして実施されたものです。この間、これだけ「死にたい」と思う人がいたわけです。宗教者の発信は十分だったでしょうか。
「発信が足りないというのは、日本の宗教者の一人として反省すべき点があるかもしれません。ただ、私は『(築地本願寺の宗派)浄土真宗の阿弥陀様が大事だ』と思っていますが、それを強いるつもりはありません。ですが、自分を救ってくださる大いなる存在や人がいると信じること。そのことが、不安な時代を生き抜く大きな支えになると思っています」
-不安や悩みの多い社会ですが、築地本願寺はどういう対応をしていますか?
「昨年4月、1度目の緊急事態宣言の発令以降も、お寺に来て心の安寧を得たい人のために、築地本願寺は門を開け続けています。法要や法話をユーチューブで見ることもできます。また築地本願寺俱楽部(クラブ)への入会が必要ですが、予約制で僧侶による対面の相談窓口『よろず僧談』を築地本願寺ギンザサロン(東京都中央区銀座2―6―4)に設けています。よろず僧談は従来、水曜日の午後だけでしたが、今年1月からは木曜日の午後も増やし週2回の対応としました。宗教・宗派問わず受け付けますし、秘密は厳守します」
≪「よろず僧談」以外にも、築地本願寺コンタクトセンター0120(792)048に悩み相談の電話をすると後ほど職員が連絡して話を聞くというシステムも設けている≫
-電話や対面以外の方法はありますか?
「現在スマートフォンアプリを開発しています。アプリでは相談の日程を予約できたり、法要や勤行の様子を見られたりするようにします。今後も悩み、苦しむ人々の手助けになればと思っています」
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やすなが・ゆうげん 1954年生まれ。慶應義塾大卒。三和銀行、JR東日本、グロービス経営大学院大学専任教授などを経て2015年7月から現職。