二食のおっちゃん、40年間ありがとう 「最後の晩餐」の引退写真に涙 大阪芸大生が粋な送り出し

竹内 章 竹内 章

40年間、大阪芸大の学生たちの胃袋を満たしてくれた「二食のおっちゃん」に感謝の気持ちを込めた、学生たちとの記念写真がSNSで大反響です。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をパロディーで再現。卒業生と年賀状のやりとりが続き、引退を知った人から花が届くなど愛されるおっちゃんは、撮影後涙を浮かべる場面もあったそう。ええ話やなあ。あれ、おかしいな。目から汗が…。 

大阪芸大には大規模な学生食堂が二つあり、学生第2食堂は「二食」と呼ばれます。二食のおっちゃんこと椿真敏さん(69)が「体力の限界です」と引退を表明したのは、1月19日でした。それを知った学生が椿さんにインタビューし、ポスターを作りました。その続きで「最後の晩餐」撮影が実現したそうです。

「40年間、ありがとう!by芸術計画学科」と題して教員のナカワキ(@ken_waki_ken)さんが写真を投稿すると、11万超のいいね!が寄せられ、コメント欄は「カツ丼が好きだったなあ」「お金なくて160円のコロッケうどんでした」「長いこと学生のためにありがとう」「さすが芸大」とまるで同窓会状態。20年前は二食でお茶かうどんばかりすすっていた貧乏学生だったというナカワキさんに聞きました。

 -投稿への反響が止まりません。

「授業の一環として大学がある河南町を独自の目線で編集しポスターをつくる、という課題を出したのですが、一人の学生がおっちゃんの引退を知り、取材したのがきっかけです。切り口が良かったので、プレゼントしたのですが、『芸術計画学科っぽい送り出しもしよう』となり、記念写真を兼ねたのが『最後の晩餐』のパロディーでした」

 

-学生にとって二食とは。

「もともとは大学構内の中央にある21号館1階にあったのですが、その後総合体育館の2階に移転しました。大学は奥行きのある敷地ですので、利用する学生の学科が分かれがちです。2食は舞台芸術学科の学生が多かったようです。揚げ物が人気で、冬になるとおでんも出ました。僕は卵焼きの天ぷらにクリエイテイブを感じました」

 

-おっちゃんはどんな方ですか。

「見た目、こわもてなんですが、学生の味方でオードブルセットなども新入生歓迎会用に作ってくれました。呼んだらカウンターを飛び越える身体能力にボクサー説も流れてました。学生のインタビューによると、2020年秋、厨房の中で調子が悪くなり、入院したそうです。『このまま続けてても学校に迷惑かけるからやめることにしてん』と語ったそうです」 

-撮影時、おっちゃんは。

「『引退文章を出してこんな大事になるなんて』と驚いた様子で、撮影後は少し目に涙を浮かべる瞬間もありました。学生は最後を形として残し、おっちゃんに感謝を伝えたいという気持ちで、培った技術やそれぞれの強みをいかして今できることに挑みました。『最後の晩餐』に近づけるため、遠近法と透視図法に気をつけました。撮影後、たまたま食堂にいた他学科の学生からも拍手が沸き起こったのも感動でした」

 

―OBOGと思われる方のコメントからも二食愛を感じました。

「学生のインタビューに、おっちゃんは『昔の学生から今も年賀状が届いており、その人たちだけでなく、学食を利用していたOBOGの皆さんに伝えたい』と話していたので、その一助になれたと思うとうれしいです。そして『おっちゃんの願いをかなえることができた』と喜ぶ学生を見ると、ほんま優しい子たちやなあと、ほのぼのしました」

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース