あれ?お薬がこんなに早く切れるだなんて…飼い主さんとお話する大切さを教えてくれたラムちゃんのこと

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

私が動物病院で診療しているときは、いろいろなことを考えています。具合が悪い根本原因は何か?次に行うべき検査は何か?一番最初にすべきことは何か?どのように治療すればベストか?…などなど。診療そのものに関して考えることは、たくさんあります。

さらに、飼い主さんのご意向…つまりどのような治療をご希望なのか、どこまでの治療をご希望なのか、治療費のご負担はどのくらい可能なのか?といったことを配慮します。

犬だから、もう高齢だから、ある程度の治療でお願いします…とおっしゃる方もおられる一方で、貯金を解約するので、出来る治療は全て受けたいという方もいらっしゃいます。

どれが正しい、正しくないということではなく、飼い主さんそれぞれのお考えを尊重すべきだと、私は考えています。

飲み薬や目薬を処方するときは、家族構成をおうかがいする場合があります。というのも、特に目薬を入れていただくときは、どなたかにお手伝いいただいて動物の体をしっかり持ってもらって点眼した方が、上手く入れられるからです。

お薬が飲ませられない、嫌がるのでかわいそう、という方がおられますが、私は、できればお薬を『飲ませる練習』をしていただきたいなと思っております。飲み薬しか無いお薬というのも存在しますので…。

ラムちゃんは、12歳のヨークシャーテリアの男の子です。とある駅前の、昭和な喫茶店オーナーが飼っておられる犬で、お店のご常連のアイドルです。先日、私が珈琲を飲みにうかがうと、ご常連の方の膝の上に乗って、羊羹を食べているラムちゃんがいました。

そのラムちゃんですが、血液検査のほか、精密検査をしてみると、「蛋白漏出性腸症」という血液中のたんぱく質が減少してしまう病気になっていました。この病気の一般的な治療は、飲み薬を毎日飲ませて病状をコントロールしていくというものです。

ラムちゃんの飼い主さんはご高齢なので、私は1日1回のお薬の方が、1日2回飲ませるよりも負担を減らせるかなと考えて、1日1回のお薬を14日分処方しました。

ところが…。2週間後の再診時にお話をうかがうと、1週間で薬が切れたとおっしゃるのです。ん?…どうしてかな…。

詳しくお話をうかがうと、飼い主さんご自身が朝晩お薬を飲んでいらして、同じようにラムちゃんにもそのタイミングでお薬を飲ませていたとのこと。もちろん、薬の入った袋には1日1回内服と書きましたし、お薬をお渡しするときもそのようにお話しいたしましたが。

今回お出ししたお薬は漢方薬が主体で、1日2回服用しても安全性に問題はなく、また、副作用が出るようなお薬ではありませんでしたので良かったのですが、お薬によっては、倍量飲むと危険なこともあります。

飼い主さんとよくお話をして、今度は1日2回飲ませるお薬をお出ししました。良かれと思ってこちらが決めてしまうと、こんなことになるんだなぁと深く反省しました。

ラムちゃんはその後順調で、いまはとても少ない数のお薬で病気をコントロール出来ています。

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