宇崎竜童が40年を経て明かす 山口百恵引退コンサート最終曲の誕生秘話

石井 隼人 石井 隼人

不世出の歌手、山口百恵が引退してから40年が過ぎた。昨年5月に楽曲の配信もスタートし、いまだその存在と名曲たちは色あせない。『横須賀ストーリー』『イミテイション・ゴールド』『プレイバックPart2』。百恵さんを楽曲面でサポートした作詞家・阿木燿子と作曲家・宇崎竜童の存在なくして、山口百恵の全盛期は語れない。多くの楽曲がある中で、作曲した宇崎や数々の著名アーティストもカバーしているのが、百恵さん引退前最後のシングル『さよならの向う側』だ。楽曲誕生から40年を経て、作曲を担当した宇崎が制作秘話を明かす。

『さよならの向う側』は1980年8月21日にリリースされた百恵さん31枚目のシングルで、同年10月5日に日本武道館で行われたファイナル・コンサートのラストを飾った楽曲でもある。純白ドレス姿で涙ながらに歌い、最後にマイクを置いてステージを後にするという伝説的演出も語り草だ。宇崎&阿木夫婦のもとに楽曲依頼があったのは、百恵さんの引退発表直後。「百恵さん最後の曲として、そしてファイナル・コンサートでラストに歌う曲として書いてほしいというオーダーでした」と宇崎は回想する。

百恵さん最後の曲を作る際に、宇崎は二つのことを思ったという。「ひとつは『え?もう百恵さんに向けて曲を作ることができないの?』というガクッとした落胆。そしてもうひとつは『もう書かなくていいんだな』という肩の荷が下りた気持ち。当時は自分のバンド活動と並行して、3か月に一曲のサイクルで新曲を書いていました。レコーディングして、それがテレビで歌われ始めたときにはもう次の曲の打ち合わせをしている。しかもそのすべてを必ずヒットさせなければいけない。たった4年程のことでしたが、あまりにも目まぐるしかった」。ヒットメーカーの宿命でもある、プレッシャーとの戦いの日々でもあった。

宇崎&阿木コンビとしての最後の百恵さんの曲は、アイドル歌謡曲としては珍しい6分を超える入魂の大作。ファンに対する百恵さんの思いを代弁すると同時に、宇崎&阿木コンビからの百恵さんへの別れの言葉のようにも読み取れる。締めくくりという大役ゆえに、生みの苦しみもあったのかと思いきや「それはまったくありませんでした。阿木からもらった歌詞を目で追うと同時に文字の裏側から音符が飛び出してきたような感覚で、歌詞を読みながら自然とメロディが口をついて出てきた。『作曲も阿木なんじゃないの!?』と思ったくらい、あまりにもスッと簡単に作曲できてしまいました」と意外過ぎる創作の舞台裏を明かす。

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