2020年新型コロナを振り返る
日本でも、新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。
新興感染症に対峙するに当たり、いたずらに不安を煽ることも、反対に、根拠のない安全神話をばらまくことも、どちらも適切ではありません。感染症対策で求められるのは、エビデンスと経験、覚悟と希望、ブレない軸と協働です。
今年3月初旬より、テレビ番組で新型コロナについて話をする機会をいただき、この連載でも、当初より下記を繰り返し申し上げてきました。
・新型コロナ感染の波は、大きいものも小さいものも、繰り返し来る
・収束までには時間がかかる
・新型コロナに限らず、さまざまな新興感染症は、これからも繰り返し来る
・最新の情報と知見を基に、正しくおそれ、最悪の事態を想定した上で、前向きに生きる
・自分と大切な人を守るために他者を守り、自国を守るために他国を守る
これは予言でもなんでもなく、公衆衛生学を学び、感染症対策に実地で携わり、そして人類の歴史を俯瞰して、現在及び未来を考察すれば、おのずから導き出されることです。今回のような新たな感染症の流行は、まさに予見されていたことでした。
人類の歴史は感染症との戦いの歴史であり、膨大な数の人の命を奪い、国家や文明を滅ぼし、社会、経済、文化、政治、宗教等に甚大な影響を及ぼしてきました。ここ20年間ほどだけを見ても、SARS(2002)、新型インフルエンザH1N1(2009)、エボラ出血熱(2014)、MARS(2015)ジカ熱(2016)と、新興感染症の流行は続きました。
過去に比して、現代の感染症の被害が、相対的に減っているように見えるのは、医療・衛生・健康・科学技術水準が格段に向上したからであり、ウイルスの出現や変異自体が止まったわけではありません。であれば、我々ができること・為すべきことは、それによって生じ得る被害を最小限に食い止めるために、あらかじめ準備をしておくことでした。
そして、「パンデミック前の元の世界に戻る」という発想は、切り替えるべきです。どうやってこれまでの考え方や対応を変えた上で、そして継続・発展させていくか、そしてその中で、その変化に対応しきれなかった人や業態が必ず出てきますので、そこをどうやって救っていくかも、考えていくことが求められます。
冬をどう乗り切るか
感染拡大防止策として、一人ひとりが、引き続き、マスク、手洗い・消毒、密を避けるといったことを徹底すること、年末年始も、できるだけ控えめに過ごすことが求められています。
「そんなこと、もうずっとやっているよ、これ以上どうしたらいいの!?」という、閉塞感も不安もあると思います。されど、これまでの皆さんの努力で、感染は確実に抑えられてきたのです。冬の低温乾燥により、ウイルスが広がりやすくなり、再び拡大をしていますが、こうした努力を地道に続けていくことが重要です。
どんなウイルスが出てきても、これまで人類は滅びていません。大丈夫です。
そして、感染は誰のせいでもありません、感染した人や組織を責めない、様々にお互いを思いやることが、社会を健全に維持するためには欠かせません。
新型コロナにかかったら・移したらと心配して、会えないでいるうちに、大切な人が、ご寿命や持病で亡くなってしまうといったこともあります。最後の機会かもしれないとすれば、万全の態勢をお取りいただいた上で、会いに行っていただけたらと、私は思います。当たり前に明日も続いていく、と思っていた日常が、ぷつりと途切れてしまう切なさを、私たちは、知っています。
――この困難と向き合う日本と世界のすべての方々に、どうか来る年が良い年でありますように。
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(参考)
・日本の感染状況
(12月23日23:55更新) YAHOO!JAPAN新型コロナウイルス感染症まとめ
・世界の感染状況1
・世界の感染者数2(上記1から、値の大きい米国とインドを除いたもの)
・世界の死者数
・国立感染症研究所:英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について (第1報)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10074-covid19-27.html
・The New and Emerging Respiratory Virus Threats Advisory Group (NERVTAG): https://www.gov.uk/government/groups/new-and-emerging-respiratory-virus-threats-advisory-group
・European Centre for Disease Prevention and Control(ECDC):Rapid increase of a SARS-CoV-2 variant with multiple spike protein mutations observed in the United Kingdom – 20 December 2020.
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/SARS-CoV-2-variant-multiple-spike-protein-mutations-United-Kingdom.pdf