〝天使の羽〟を持つ!?看板猫 店主の悲しみを癒す いまは幸せに

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 熊本・天草の東シナ海に面した西海岸にある白鶴浜は、環境省の「快水浴場百選」に選ばれ、夏は海水浴やキャンプ、冬はサーフィンなどで賑わう。約1.3キロの美しい白浜は鶴が翼を広げたように見えることからその名がついたという。そんな風光明媚なビーチ沿いにあるのが「SUNSET CAFE」だ。店長の田口あかねさん(31)の飼い猫、くろ(メス、8ヶ月)は今年7月、店の前にひょっこり現れた野良の子ども。悲しい出来事を乗り越えられたのは、くろの存在が大きかったという。田口さんに話を聞いた。

 田口さん 初めてくろを見かけたのは今年7月初め。ちょうど海の家の営業が始まったばかりのころでした。生後3ヶ月くらい。キジ白の母猫と一緒に店の周りをうろうろしていたんです。警戒心が強く、全然人に慣れてなくて、少し離れた所から、親子でこちらの様子を伺うといった感じでした。

 当店は夏は海の家、シーズンオフはカフェ&バーとして営業しています。特に夏場、店の前の水平線に夕陽が沈むさまは絶景です。経営者の男性オーナーに雇われ、私がここで働き始めたのは昨年夏から。「このビーチに来た記念に、何か思い出に残るものがあったらいいね」とオーナーと相談し、店の前の壁に天使の羽と傘の絵を私が描いたのも昨夏でした。いまではそこで写真を撮られる方が増え、ちょっとしたインスタ映えスポットにもなっているんですよ。

 くろが現れた当初、動物好きのオーナーと私は、一緒にダンボールで母猫とくろのための家を作ったり、キャットフードを買ってきて、さりげなく置いたりしていました。ダンボールの家は気に入ってくれたのか、朝出勤すると親子で入って寝ていたこともありました。でも、私たち人間との距離は縮まらず、夏の間、くろが触らせてくれることは決してなかったんです。

 7月も20日が過ぎ、「さあ、今年もこれから海水浴客で忙しくなるから、お互いに頑張ろうね」と話していた矢先、オーナーが急死しました。前日まで普通に一緒に働いていて、その日は店が暇だったので一人で沖まで釣りに行き、帰りも「また明日ね」といって別れたのに…。心臓が悪かったそうで、享年41歳という若さでした。

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