ディズニー、ジャニーズ、石原軍団、ドニー・イェン。そのすべてを通過した日本人俳優は、現在26歳の丞威(ジョーイ)をおいてほかには見当たらない。単身中国に乗り込み、映画『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』(2021年1月1日公開)で宇宙最強の男ドニー・イェンと壮絶バトルを繰り広げた。しかも海外での活動資金300万円を自らクラウドファンディングで集めもした。まさに異色の経歴の持ち主。日本の芸能界でのミッションを次々とこなし、海外を股にかけて活動する男・丞威とは一体何者か。
ダンサーの両親にアメリカで育てられるも、出生の地は産婦人科医の祖父がいる日本だった。アメリカでは『ディズニー・チャンネル』に子役として出演。11歳の頃に日本を訪れた際、両親の知り合いであるジャニー喜多川氏とNHKホールで初対面した。
「リハーサル室に向かう廊下で『君がジョーイくんかい?』と声をかけてきたのが、ジャニーさんでした。その頃の僕はほとんど日本語が喋れず、日常会話は英語でした。ジャニーさんもアメリカ出身ですから、久々に英語で喋りたかったのかもしれません。途中でジャニーさんから『コンビニで買い物をしてきて』と言われて受け取った1万円札が、僕が人生で初めて受け取った日本円でした」とファーストコンタクトの思い出は興味深い。
ジャニーさんから「YOU、出ちゃいなよ」
「YOU、出ちゃいなよ」。鶴の一声で初対面の日にNHKの『ザ少年倶楽部』にダンサーとして出演。「そこで『新しい仲間です!』と紹介されて、気づいたら3年くらいジャニーズで踊っていました。でも普通のジュニアとは違う扱い。髪形もドレッドヘアーだったし、衣装も私服。振り付けも覚えずに自由でいいとも言われました。自分としてはとにかくダンスが好きだったので、ステージで踊れることが嬉しかった。今考えるとずいぶん異色ですよね」と改めて驚く。
ジャニーズ事務所に所属はしておらず、留学生のようなポジションだった。13歳の頃に喜多川氏から「YOUは海外でやるべきだ」と言われたことをきっかけに、再びアメリカに戻る。「当時は子供でしたから、『そうか』としか考えていなかったけれど、今は“日本では収まりきらない存在”と言ってくれたのかなと思っています」と現在の活動スタイルを喜多川氏が予言してくれたように感じている。
石原軍団で偉大な先輩・舘ひろしからの洗礼
再び日本の芸能界に戻ったのは、2016年に行われた石原プロ次世代スター発掘オーディション。準グランプリをきっかけに石原プロモーションに所属した。舘ひろしと行動を共にし、舘主演の映画『終わった人』では、舘演じる主人公の青年期を務めた。「舘さんのバスローブ姿で現場入りするという伝統を目の当りにしました(笑)。ジャニーズでの経験とはまた違った、日本人俳優のカッコよさやスター性を学ばせていただいた」と感謝しきりだ。
中国での『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』の撮影を通して、改めて世界を意識。昨年独立し、フリーランスになった。しかしジャニーズや石原軍団での経験は大きな糧だ。「日本での大きな芸能プロダクションの中で、日本の芸能界の仕組みを勉強させていただきました。中に入らないとわからない、アイドルや俳優たちの知られざる苦労や努力を垣間見ることができたのは貴重でした」。
目指すのは、無国籍俳優だ。「今年はコロナもあって海外での活動が思うようにいかなかったけれど、来年は育ったアメリカに戻りつつ、もっと大きい規模で動けたらと思う。アメリカを拠点にするのではなく、あくまでフットワーク軽く無国籍に。いつかレオナルド・ディカプリオと共演したい」と夢も無限大。唯一無二の異色の経歴を武器に、今度は世界を相手に勝負する。