想像以上にカワイイ…ウリ坊たちが大集合!イノシシに魅せられた男が伝える「彼らの本当の姿」

北村 泰介 北村 泰介

 イノシシに魅せられた兵庫県在住の動物写真家・矢野誠人氏が15日から東京・新宿のニコンサロンで写真展「やさしい母さんとおちゃめなウリ坊」を開催する。開幕を前に展示作品の一部を当サイトで紹介いただいた。六甲山に生息するウリ坊(子イノシシ)たちのかわいさをご堪能ください。

 矢野氏は1984年生まれ、兵庫県伊丹市出身。「2012年頃から近所で野良猫の撮影をしていて、動物を撮影する事が楽しくなり、翌年頃から次第に野生動物を撮りたいと思うようになりました。そこで六甲山にイノシシがいるということは知っていたので一度撮影に行ってみようと思いました」。そう振り返る同氏は、そこで出会ったイノシシたちに魅了され、以降、イノシシの撮影がライフワークとなっている。現在はフリーランスとして、人と動物との共生をテーマに日本各地の野生動物や動物園、ペット撮影にも取り組んでいる。

 「イノシシを撮影し続けること6年。1日として同じ日はない彼らの日常は私を飽きさせることはありません。特に子育て中の親子の姿は、まるで人の親子を見ているかのようにとても微笑ましいものです」と矢野氏。当初は「イノシシによる農作物等の被害は甚大です。街中に出てしまい人を傷つけてしまうといった事態も起きています。イノシシは怖くて厄介者、そういったイメージがついてしまっています。私自身もそう思っている一人でした。初めてイノシシを見たとき近づくことさえできませんでした」と言うが、「そこから何度かイノシシを観察するうちに自分の中に描いていたイノシシ像と実際のイノシシとの違いが見えてきました」と明かす。

 その「違い」を問うと、矢野氏は「ニュースで見るイノシシは人を襲ったり、農作物を荒らすちょっと怖いイメージでした。でも、イノシシはとても温厚で、ちょっとビビりで、とってもゆっくりした時間を過ごしています。また頭も良いので匂いで人を覚えています。『この人は大丈夫』と判断してもらえているのでウリ坊を見せてくれます」と説明した。

 今回、当サイトに提供いただいた5枚の写真を見ると、確かに撮影者=人間への「信頼感」が伝わってきた。リラックスしているのだ。ウリ坊は母親に寄り添いながら、カメラに向かって警戒心どころか好奇心にあふれた、あどけない表情を見せる。安らかな寝顔、おっぱいを夢中で吸う姿…。「素」の顔がそこにある。

 ちなみに、イノシシの育児は「母親だけ」なのだという。矢野氏は母と子の日常を次のように証言する。

 「親は母親だけで育児が大変な様子です。ウリ坊が遊びに夢中になってどこかに行ってしまうと食事の途中でも探しに行ったりウリ坊を呼んだりと、とても忙しそうです。昼寝をしていてもウリ坊たちが周りで遊ぶので落ち着かない様子。ウリ坊は元気いっぱいでよく遊びます。追いかけっこしたり木や葉っぱで遊んだり、首相撲といって兄弟で強さを競ったりします」

 オトナのイノシシ2頭の間からウリ坊が顔を出す写真もあった。それは母と、また別の牝イノシシかと問うと、矢野さんは「オトナのイノシシは親子です。つまり3世代で一緒に過ごしています。血の繋がらないもの同士が一緒に過ごす姿を僕は見たことがありません」と指摘。祖母、娘(母)、孫(子)と3世代で行動を共にしているのだ。そんな発見もある写真展。最後に、矢野氏の思いを聞いた。

 「イノシシは害獣としてニュースなどメディアで取り上げられます。もちろんそれも事実ですがイノシシたちの日常は全く違います。とても穏やかでゆっくりとした時間を過ごしている彼らの本当の姿を見ていただきたいのです。おそらくこの写真展では誰も見たことのないイノシシの姿ばかりだと思います。イノシシの存在は知っていてもその生活を知っている方はほとんどいないです。害獣が悪者なのではなく、害獣とは何なのか、どう向き合っていくべきなのかを考えるきっかけになればと思っています」

 東京での会期は28日(日曜休館)まで、午前10時30分~午後6時30分の開催(最終日は午後3時まで)。

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