急成長の「カーシェア」サービス…コロナ禍で伸び悩むも再び注目

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 若者の自動車離れ、なんていうことが言われて久しいこの頃ですが、若者に限らず都心部ではクルマを持たない人が多くなっています。2017年のデータですが、軽自動車を含めたクルマの保有率が、東京都では一人当たり0.23台、つまりクルマを持っている人は四人に一人弱という低い値になっています。前回の国勢調査では、東京の一世帯当たりの人数は平均で約二人ですから、クルマを持っている世帯は半分よりもやや少ないということですね。

 都会では土地や物価が高くて駐車場などの維持費が高くつくこと、そしてそもそも公共交通機関が充実していてクルマがなくても困らないことなどが理由でしょう。

 しかしクルマに利用価値がないというわけでもなく、たとえば荷物が多い場合、ドアtoドアで移動できる便利さ、公共交通機関が動いていない時間帯の移動などでクルマが欲しい状況というのはあるわけです。そこで生まれたサービスが「カーシェア」です。

カーシェアとはどういうもの?

 文字通り、一台のクルマを複数の人でシェアするということです。従来のレンタカーと比べると「短い時間」、「安い料金」で「手軽に」使える、というメリットがあります。一例を挙げると、カーシェアリング大手のタイムズでは15分220円で利用できるようになっています。利用には会員になる必要がありますが、入会時にカード発行料が1650円、月額基本料金は880円(ただしこれは利用料金に使うことができるので、一時間以上利用すれば実質0円)と、かなり敷居が低くなっています。

 クルマを保有する維持費と比べて圧倒的にリーズナブルなので、登場以来十年あまりで大きく成長してきました。2020年3月現在、その会員数は200万人です。特にクルマそのものに対する思い入れがなく、あくまで生活の道具として考えるユーザーには非常に合理的なサービスですね。

コロナ渦で一時的に伸び悩む

 しかしこの急成長を続けていたカーシェアリングですが、2020年3月から4月にかけて急ブレーキがかかりました。最大手のタイムズカーシェアは、2020年2-4月の決算で、初の営業赤字を発表しました。これは新型コロナウイルスの影響で、誰とも知れない人とクルマを共有するリスク、営業形態上クルマの除菌が徹底しにくいことなどが影響したのではないかとみられます。さらに、外出制限でそもそも人が移動しなくなったことなどもあって、利用率が激減したのです。

5月以降、また利用が伸び始めた

 ただ、その後の様子を見るとこの減少は一時的なものだったようです。緊急事態宣言が解除され、またGOTOトラベル事業が開始されるなどもあって、人の移動が自由になり、さらにテレワーク以外の人の通勤の移動が徐々に戻りはじめると、今度は公共交通機関の利用を避けたい人たちにカーシェアが注目されはじめたのです。

 言うまでもなくクルマはプライベートな空間を確保できますので、電車やバスなどと比べて感染のリスクが少ないと考えられます。またこれは特に最近言われるようになったことですが、新型コロナウイルスの感染は飛沫によるものが多く接触感染は比較的少ない、というデータもあります。

 これらの追い風を受けて、5月以降はまた順調に会員数、利用とも伸びているようです。特に4月以降に新しく会員になった人の動機は「公共交通機関を使いたくないから」が5人に1人、というデータもあります。

 ウィズコロナの時代の、人の移動のあり方。そのひとつの形として、カーシェアは今後さらに伸びていくのではないでしょうか。

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