民間医療機関でのPCR検査が急増 「事業と感染拡大防止の“両立”のため、費用をかけても…」企業の思い切実

広畑 千春 広畑 千春

 新型コロナウイルス感染症の第3波が広がる中、民間医療機関でのPCR検査も急増している。神戸市の診療所では11月の検査件数が279件と前月の3.6倍に急増。保健所で「濃厚接触」とは認められない軽微な接触の人や、介護や接客が必要な従業員を対象に複数人の検体をまとめて検査する「プール検査」も1カ月で7社延べ約170人が受検し、関心が高まっている。

 今年6月からPCR検査を導入している神戸国際医療連携クリニック(KICC)。訪れた「丸山工務店」(神戸市)の社長、丸山生朗さん(49)は、「人に会わなければ仕事にならない。感染したら事務所ごと自宅待機もありうる。でも業務は止められない。かといって、絶対に感染を広げるわけにもいかない。うちのような中小企業で、事業継続と感染拡大防止とを“両立”させてくれるのは、PCR(検査)しかないんです」と言い切る。

 同社は兵庫県内の住宅用太陽光発電設備や大型プラントを手がけ、24時間365日メンテナンスも請け負う。4月の緊急事態宣言下でも二つの事業所に毎日1人は出勤し、事業を継続してきた。

 一方、“第1波”では取引先でも重症者が出たといい、通常業務の再開にあたって6月、同院で社員や出入りの職人ら22人の抗体検査を行ったところ、2人が陽性に。本人らには全く心当たりも症状もなく、幸いその家族や周囲にも検査をしたが陰性だった。

 「不幸中の幸いで、2人は感染力が弱かったようですが、誰がどこで感染していてもおかしくないと痛切に感じた」と丸山さん。自身も、多い時で一般の顧客や取引先、役所に現場の職人…と20人以上に会い、飲食を伴う接待もある。「不安もありますが、やっぱりお客さま相手では断りづらい。いっそのこと、緊急事態宣言の時のように夜の飲食禁止、とか出してほしいぐらい」と話す。

 今月初旬には、従業員1人が発熱し早退した。保健所に連絡したが、もう少し様子を見るよう言われ、自宅待機になった。翌日には熱も下がったが、万が一を考えて自宅待機を続けさせ、接触の可能性があった12人は全員、会社としてプール方式でのPCR検査を実施。「費用が抑えられ、速く結果が得られることもポイントだった」と丸山さん。結果は全員陰性。ウイルスが少なかった場合に備えて健康観察も続けたが、異常はなかった。

 第3波が広がり、「身近でも、子どもが熱を出して保健所に相談しても検査を受けさせてくれない-という話をよく聞く。周囲にも感染者が出てきているし、確実に増えている実感はある」。丸山さんは社内で最も対人接触があるため、2週間に1回のペースでPCR検査を受検。さらに、もし従業員らに発熱等があれば検査をする予定という。

 「保健所に頼んでいると間に合わない。民間ならすぐ結果も出る。確かに費用はかかるが、無症状で感染させてしまう可能性だって十分あり得る。後手に回るより、先手先手で感染拡大を防止したい。その方が信頼にもつながる」と話す。

 KICCでは6月に自費PCR検査を導入。9月は66件、10月は77件だったが、11月は279件と急増し、電話が鳴り止まない状況という。独自に小型自動解析装置も導入し、ほぼ徹夜で解析を行っており、福島和人医師は「感染拡大で、企業を中心に、個別・プール問わず20~30人をまとめて検査してほしいという依頼も増えている」と指摘。全国のPCR検査件数は横ばいの状況だが、「ニーズはどんどん高まっている。プール方式についても、手間はかかるが、複数人まとめて検査できコストを抑えられるメリットもある。会社や施設で陽性者が確認された場合、濃厚接触者と認定される前に広く検査を行い、無症状の感染者のスクリーニングとして積極的に取り入れてほしい」と話している。

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