広島カープの元外野手だった鈴木将光さん(33)が今年9月、広島県三原市に「すずき鍼灸接骨院」をオープンした。JR三原駅から車で約5分。閑静な住宅街の一角にあり、昼間は主婦や高齢者の患者が多く、夕方からは勤め帰りの人や学生が訪れる。鈴木さんは「診療時間は午後7時までなんですが、部活をしている学生さんのために8時、9時まで開けていることも多いです。地域の皆さんが気軽に来ていただけるような治療院を目指しています」と語る。
05年度の高校生ドラフト1位で外野手として入団。10年間の現役生活を送り、15年限りで引退した。翌春、広島市の朝日医療専門学校に入学。昼間は治療院でアルバイトしながら、夜間課程で学ぶ日々を3年間送り、国家資格である鍼灸師の資格を取得した。この道に進んだのは、故障に苦しみ、1軍では通算2安打に終わったプロ生活があったからだ。
「入団1年目の春に右肩を痛め、秋にはヘルニアの手術をしました。そこからは毎年ケガとの戦い。ケガに始まりケガで終わったプロ生活でした。『こんなはずじゃなかった』という悔しい思いがずっとあって、そういう思いを他の人にはしてほしくないというのが、この道を選んだ理由です。痛みを抱えて生活する苦しみはよく分かるので、スポーツをやっている子供達もそうですし、仕事を頑張っている方や痛みを抱えている高齢者の方をサポートしていければと思っています」
16年に結婚した妻の聡子さん(33)も柔道整復師の資格を持っている。元女子プロ野球選手で、8年前から広島市のMSH医療専門学校の女子野球部監督も務める。今年7月に長男の琥太郎ちゃんが生まれたため、現在は育休中だが、1年後に復帰の予定。それまでは育児をしながら夫をサポートする。鈴木さんは「僕は腰痛や神経痛など慢性的な痛みにアプローチし、妻は骨折や脱臼など急性症状に強い。どんな症状でも対応できます。最強の治療院なんです」と笑う。痛みを取るだけでなく、日頃の体調ケアやリハビリ、トレーニング方法などのアドバイスも行う。
カープの選手とは現在も親交があり、治療院オープンの際には佐々岡監督からもお祝いの花が届いた。治療室にも選手のサイン色紙が並ぶ。「いろんな人にお祝いしていただきました。オフには選手の体もケアしてあげられれば」。競輪選手やプロゴルファーら他競技のアスリートからも信頼を寄せられ、トレーナーとしてゴルフトーナメントに帯同したこともある。
「独立するまで働かせていただいた治療院の院長をはじめ、多くの方に支えられてここまで来れた。早く一人前になって、この治療院を長く続けていくことが恩返しだと思っています」。定休日などを利用して週に2日、福山市の野球スクールで小中学生の指導も行っており、野球との縁も続いている。ケガに苦しみ、思い描いた活躍ができなかったプロ生活。しかし、そこでの経験を生かし、第2の人生では大きな花を咲かせる。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・工藤直樹)
◆鈴木将光(すずき・まさみつ)1987年4月8日生まれ。富山市出身。現役時代は182センチ、85キロ。右投げ右打ちの外野手。石川・遊学館高時代に甲子園に2度出場し、通算64本塁打を放った。05年度高校生ドラフト1位でカープに入団。12年に1軍初昇格し、初打席初安打を放った。15年限りで引退。通算成績は6試合に出場、11打数2安打0打点。家族は妻と1男。
【すずき鍼灸接骨院】 三原市宮浦4の11の17(TEL0848・88・9011)。駐車場あり。定休日は木・日曜。