吊り上がった目に、鋭く尖った爪。人間の数倍はあろうかという巨大な体で、背中の毛を逆立て動き回るのは…リス??
もちろん、本物ではなく、東京都にある「町田リス園」の手描き看板だ。にしても、リスといえば、小さくて、フワフワの毛にまんまるの目。機敏なしぐさでチョコチョコと動き回る、愛らしい動物のはず? デジタル全盛の時代にあってなんとも味わい深いそのタッチや衝撃のリスの姿は来園者を驚かせ、たびたびSNSで話題にも。一体、どんな人が描いているのでしょう。。。
今回、話題になったツイートはシカクガング(@shikakugangu)さんのもの。「リスこわ」と超シンプルなつぶやきとともに7.9万以上のいいねを集めています。町田リス園は、広場で放し飼いする約180匹のタイワンリスと間近で触れ合える、カップルや家族連れに人気のスポット。シカクガングさん自身「コロナ禍で交通機関を使って遠くへ遊びに行くことが難しくなったため、最近は近所のレジャー施設を徒歩や自転車で探索しに行くようになり、リス園にも初めて行きました」といい、「入園チケットのイラストはとても可愛らしかったのに、あの注意書き看板を見た時は…衝撃的でした」と振り返ります。
同園によると、園内の手描き看板はすべて、副園長の福田啓一さん(58)が制作しているそう。「我ながら、かなりアクの強い看板ですからね」と胸を張り(?)ます。そもそもはリスの爪への注意喚起で看板を設置することにしたのですが「いちいち業者さんに頼むお金はないし、自分もちょっと技術があったので自分で描くことにした」といいます。
「僕は松田聖子世代です!」という福田さん。漫画少年だったといい、今も趣味は油絵や漫画を描くこと。「信じてもらえないんですが、影響を受けた作家は手塚治虫さんや永井豪さん。絵の印象からは、楳図かずおさんや日野日出志さんだと思われがちなんですが…」と話します。「そうした作家さんのエッセンスを全部ひっくるめて、自己流にアレンジした感じ」というその絵は「やっぱり、看板はある程度『目障り』じゃないと皆さん見てくれないじゃないですか。なので、ちょっと無理やり誇張して、お客さんの顔をぐいっと引きつける気持ちで」描くそう。出入りの業者からもアドバイスをもらい、画材には建設用の塗料を使うなど耐久性も重視。通常の業務のかたわら、1日1時間ずつ5日ほどかけて制作しています。
勤続30年ほどで看板も静かに異彩を放っていたものの、火がついたのは昨今のSNSの普及。「知らない間に大騒ぎになって、忘れた頃にまたなる。子どもさんはただ怖いだけみたいですが、やっぱり大人が見て面白いんですかね?描いた本人はよく分かってないんですが、こんな見方もあるのか、と逆に教えられています(笑)」と福田さん。驚くことに「不快感を与えないようにバランスには気を使っていますが、幸いこれまで何万リツイートとかされても、だいたい好意的な反応ばかりなんです。うれしいですね」とも。
冬眠を控えて餌を蓄えるこの時期は、リスも気が荒くなりがちで「タイガー期」とも呼ばれるそう。シカクガングさんも「確かに喧嘩しているリスも多く見かけ、その様子はまるで猛獣のようでした…」とも(笑)。福田さんいわく「あの子らからしたら、餌をねだってお客さんの体に飛びついたり、登ったりしているだけなんですが、やっぱり木の枝を登るだけあって鉤爪が意外と大きい。前歯も尖っているので肌を傷付けやすいんです。猫の爪でケガするのと似ているかもしれませんが…。気をつけて触れあってもらえたら嬉しいです」とフォローします。
そうそう。リスたちは餌集めに必死ですが、園内はいま、紅葉真っ盛り。さらにシカクガングさんによると、町田リス園の向かい側にある「日本の歴史100選」にも選ばれた「薬師池公園」の公園は湖畔の紅葉がとりわけ美しいそうです。公園の南側には今年春にオープンした「薬師池公園ウェルカムゲート」があり、町田産の食品直売所やお洒落なカフェレストランが親子連れで賑わっているそうですよ!