「まちこ」がクレームに!「エスカレーション」も要求されて…<コールセンター編>

おもしろ業界用語

平藤 清刀 平藤 清刀

電話を通してサービスや商品を顧客に案内したり、問い合わせやクレームを処理したりするコールセンター。仕事の特性から生まれた用語を、元オペレーターのKさんに聞く。

コールセンターの仕事は大きく「インバウンド」と「アウトバウンド」に分かれる

「ひとくちに『コールセンター』といっても、業務内容によって『インバウンド』と『アウトバウンド』に分かれます」

「インバウンド」といえば、一般的には外国から訪れる旅行者を指すけれど、コールセンターでは顧客からかかってきた電話に応対する業務をいう。

「内容は、ほとんど問い合わせとクレームですが、サービスへの申し込みとか前向きな意見もあります」

一方「アウトバウンド」はこの逆で、企業から顧客へ電話をかけて、商品やサービスを売り込む業務。いわゆる「電話営業」のこと。アウトバウンドはさらに、説明のために店舗や会社へ来てもらう約束をとる「テレホンアポインター(テレアポ)」や、市場調査または満足度調査を行う「テレマーケティング(テレマ)」に分かれる。

「まちこ」が長すぎて怒り出す人も

「サポートセンターとかお問い合わせ窓口に電話をかけても、回線が混みあっていて、しばらく待たされるときがありますね? あの状態を『待ち呼(まちこ)』といいます。かかってきた電話は着信順に待ってもらうのですが、その状態を『キュー』といいます」

着信した電話は「ACD (Automatic Call Distribution)」という装置で、自動的且つ均等にオペレーターへ振り分けられる。しかし回線数を超える着信があったら、どうしても待たせてしまう。気の短い顧客だと「もう待てない!」と、自分から電話を切る(「放棄呼」という)。だが、繋がるまで辛抱強く待ち続けて、本来の用件より先に、長時間待たされたことへのクレームをいう人もいる。

「『一次対応』のオペレーターがお詫びしても聞き入れてもらえず、上席に代われと要求されることがあります。一次対応のスキルでは対応が難しかったり顧客から要求されたりしたとき、上席へ引き継ぐことを『エスカレーション』といいます」

「一時対応」とは、最初に応対するオペレーターのこと。顧客から「上の者に代われ」と要求されたりオペレーターのスキルで対応できなかったりしたとき、上席へ引き継ぐと「二次対応」となる。また「電話を長時間待たされた」のように、本来のクレームとは別の理由で発生するクレームを「二次クレーム」という。

オペレーターが「使ってはいけない言葉」がある

業界用語というのは、その業界でふだん使われている独特のいい回しや表現のことだが、コールセンターでは「使ってはいけない言葉」があるという。

「大きく分けると『相手に伝わらない言葉』『否定や失礼ないい回し』『間違った日本語』ですね」

これもある意味で業界用語なので、一例を挙げてみよう。

【相手に伝わらない言葉】

社内用語、専門用語、業界用語。独自の略称や隠語も含む。

「無意識にやってしまいがちですが、伝わらない言葉は何もいってないことと同じです」

【否定や失礼ないい回し】

サービスの限界を超える過剰な要求をされても、「できません」ときっぱりいい切ったら相手の神経を逆撫でして怒らせてしまう場合がある。

「そういうときは『弊社では致しかねます』と、やんわりお断りします」

失礼ないい回しとしては、相手の名前を尋ねるとき「下のお名前を教えてください」といいたくなるが、これもNGだという。

「正解はないと思いますが、尋ねるときは『お客様のフルネームを教えていただけますか?』が無難でしょうね」

【間違った言葉】

「よくあるのが『とんでもない』を丁寧にいったつもりで、『とんでもございません』という間違いです。なぜ間違いか分かりますか?」

「とんでもない」は、「とんでも+ない」ではなく「とんでもない」でひとつの形容詞だ。「だから丁寧にいうときは『とんでもないです』とか『とんでもないことでございます』が正しいのです」

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