「猫を飼いたい!」と言い続けていたら…小さな白い毛糸玉のような、美しい猫と暮らすことに 

渡辺 陽 渡辺 陽

一軒家に迷いこんできた1匹の子猫。近所の人に譲渡したが、数日後、道路を歩いていた。保護主は、「手放した!?」と怒りを覚えたが、じつは、道路を歩いていたのは、譲渡した猫ではなかった。

台風が上陸した日、迷い込んだ小さな白い子猫

2019年10月下旬、関東に大型台風が上陸した日、上尾という町のとある一軒家に小さな白い子猫が迷い込んだ。家主は、見たところ生後間もない感じだし、雨に濡れていたので見捨てるわけにもいかず、保護することにした。ただ、犬とハリネズミを飼っていていたので、それ以上動物を飼うことはできず、猫を飼いたがっていた近所の家族に引き取ってもらった。

ところが3日後、家主は譲渡したはずの子猫が道路を歩いているのを偶然見かけた。すぐに保護して動物病院に連れて行くと、体重はたった250g、生後2週間くらいではないかということだった。「無責任な人には絶対に譲渡できない」と思った家主は、新たに里親を探し始めた。

後に分かったことだが、道路を歩いていたのは、最初に迷い込んできた子猫の妹猫だった。家に迷い込んできたのは男の子で、譲渡先で大切に飼われていた。子猫たちは、台風が来た時に、母猫とはぐれてしまったのではないかと考えられている。

犬とは縁がなかったが、猫なら飼える

埼玉県に住む斎藤さんは、30代の時、離婚や介護、両親の他界など、立て続けにいろいろなことが起こった。しかし、40代になって生活も安定したので、兼ねてからの夢だった犬との暮らしを実現させようと思った。里親サイトで毎日犬を探したが、一人暮らしで独身だったので、保護団体の里親募集の基準に合わず、断念せざるを得なかった。ちょうどその頃、斎藤さんの周りで猫を飼う人たちが増え始めた。

「友人知人から猫の話を聞くうちに、猫なら飼えるかも!と思うようになりました。子供の頃はいつも猫が周りにいる環境で育ったし、猫なら散歩も必要もない。持ち家なので傷をつけられても大丈夫だったし、今の生活に猫がフィットしたんです」

周囲の人に「猫を飼いたい!」と言い続けていたら、ネイリストさんが、「子猫を引き取ってくれる人をお客様が探しているんです」と紹介してくれた。その人の義母が、子猫の保護主だった。

「この頃は誰も妹猫だと思わなかったので、譲渡してもらった子猫を捨てたという人に激しい怒りを覚えました。同時に、この可愛い子猫を何が何でも引き取りたいという思いが募り、感情が爆発しそうになりました」

ただ、この時はまだ他に候補者が2人いたので、斎藤さんは、子猫を飼いたいという気持ちを必死で抑えた。また、保護団体の厳しい里親基準が頭の中を駆け巡り、聞かれてもいないのに自分の生活環境や仕事について詳しく話したのを覚えているという。

「こんなに小さいの!?」

11月下旬頃、斎藤さんは猫に会いに行った。まだ600gぐらいで、「こんなに小さいの!?」と驚いた。とても美人で、小さな白い毛糸玉が転がっているようだった。母猫と早くに分かれてしまったせいか人間への警戒心も薄く、おもちゃで遊んだり手にじゃれてきたり、人懐っこい印象だった。

2019年12月21日、子猫を譲渡してもらうことになった斎藤さんは、キャリーバッグを持って迎えに行った。保護主は、使っていたトイレ砂、おもちゃ、フードなどを譲ってくれた。

斎藤さんが大のビール好きなので、名前はビアちゃんにした。

ビアちゃんはすっかり人なれしていて、特に怯えた様子もなくソファでくつろいだり、お昼寝したりした。2時間後に排便した時には感動したという。

「まったく物おじしなかったのですが、抱っこが嫌いで、私の手足に噛みつきまくり、可愛い見た目とは大違い。かなりの暴れん坊でした」

ビアはちゃんは、今では抱っこ好きになり、膝の上で寝るなど斎藤さんに甘えるようになった。追いかけっこするのも好きで、わざとイタズラをして、斎藤さんに追いかけさせる小技も使う。

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