2020年11月30日にスタートするNHKの連続テレビ小説「おちょやん」は、上方女優・浪花千栄子さんの半生をモデルにした物語だ。彼女は生前、大塚製薬の「オロナイン軟膏(なんこう)」(販売1953~1972年)のテレビコマーシャルに出演していたが、起用の理由として、こんなウワサがある。それは、彼女の本名が「南口キクノ(なんこうきくの)」だったから……というもの。まるで「軟膏効くの?」とCMに出るために名付けられたのか、と有り得ないことまで疑ってしまう。大塚製薬は運命を感じて起用せずにはいられなかった、というところだろうか。ウワサが真実かどうか、大塚製薬に聞いてみた。
すると、同社より実際に放映されていたテレビCM「南口キクノ篇」を提供してもらった。その中で、浪花さんと共演している女性が「浪花さんは、聞くところによりますと、本名が南口キクノさんとおっしゃるようでございますね」と話を振る。それに対して浪花さんはこう答える。「そうでございます。そのご縁から、オロナインのコマーシャルやらさせていただいたんでございます」。どうやらウワサは本当らしい。
1953年に発売スタートした同製品。販売当初から広告活動に力を入れ、コマーシャルに人気タレントを積極的に起用し、知名度アップを図ってきた。
浪花千栄子さんの起用前、同製品の看板タレントといえばコメディアンの大村崑さんだった。彼も好評だったそうだが、途中で降板。それは浪花さんの本名を知った当時の社長が感激したことで、交代の打診があったからだそうだ。ちなみに、大村さんはその後、同社の「オロナミンC」のコマーシャルに出演することになった。
製品をお茶の間に印象付けた浪花千栄子さんは、1907年生まれの女優。物腰柔らかな関西弁の中に、しっかりとした芯が見え隠れする。「大阪のお母さん」という異名をもち、昭和時代のドラマに絶えず出演する人気役者だった。そんな彼女をモデルに描かれる朝ドラでは、どのような顔を見せてくれるのだろうか。
■大塚製薬株式会社 「オロナインH軟膏」 https://www.otsuka.co.jp/ohn/