大阪都構想の否決を受けて安堵する声、嘆く声、悲喜こもごもである。中には否決が決まってから「住民投票という名の無駄遣い」という声まで飛び出しているが、決してそんなことはない。今回の大阪市廃止の住民投票には大きな成果があった。
結果は変わらないが、大阪はこれを機に間違いなく変わると確信している。
あれだけの市民を巻き込み、街の将来についてこれほどまで真剣に議論されたことがあっただろうか。それも二回も。地方自治と二十年近く向き合ってきた私から見れば、それだけでも必要経費をはるかに上回る大きな財産が残ったと思う。
賛成派も反対派もこの5年間で大きくブラッシュアップされ、感情的な部分も多々あったが、それぞれ欠点を補完する形で議論が進化し、いずれの道を辿っても今より良くなるのではという感触を個人的には得ていたし、投票前にそうした記事も書いた。
120万人にも上る大阪市民が真剣に悩み、ひとつの道しるべを示した。これこそ金では買えない大きな財産だ。市民意識の向上は結果的に良質な政治を生み出す。関心が高ければ高いほど政治家は結果が求められる。
なにせ、これで大阪市がこれまで以上に悪くなったら、「大阪市廃止は大阪を悪くする」と声高に叫んだ反対派の立場がないではないか。大いなる失望の中にいる方も多いかもしれないが、この戦いには意義があったと納得する日が私は来るように思う。住民が街の未来のために議論した時間は必ず報いられる。なぜなら、他のどこの街もそのようなことはしていないのだから。
大阪は変わらないのではない。これを機に大きく変わると信じたい。
ただ、「変わらずに残る為に変わらなければならない」という結論を選択したのだと痛感する。反対派の旗頭だった柳本顕氏(元大阪市議)の「このままの大阪市でいいわけではないのです。大阪市をベースとしたこれまで以上の成長を」という言葉が耳に残る。
反対派のお手並み拝見。賛成派は結果を尊重し、彼らの持つノウハウもまた大いに生かされる。都構想という統治機構は否定されたが、その中の提案には現状でも遂行できることも沢山ある。
2025年大阪万博、2027年カジノ開業、同時並行で進む関西空港第一ターミナルの拡張工事、第三ターミナルの新設、次の注目は今後の大阪の動きそのものだ。そして、賛否両陣営で汗した多くの市民に敬意を表したい。