「カンプウカイ」って知ってますか? 北海道民なら当たり前の風習…も、コロナ禍でついに“絶滅”状態?

広畑 千春 広畑 千春

 一足先に、紅葉真っ盛りの北海道。そんな北海道民は本来この時期、ソワソワし出すそう。それが「カンプウカイ」。漢字では「観楓会」と書き、その字の通り紅葉した楓を愛でるのか…なんと雅な…と思いきや、紅葉は全く関係なく、とにかくみんなで泊まりがけで飲む!-という話も。それでいて、忘年会ではないのだとか。

 道民以外には「???」となりがちなこの風習。広辞苑には載っておらず、北海道方言辞典には収録されている様子。ちなみにマイクロソフトOfficeの初期設定では一発変換されませんでしたが、iPhoneでは変換されました。ツイッターに、北海道ならではの「観楓会」を描いた漫画を投稿したイラストレーターの藤沢チヒロさんに聞いてみました。

-面白い風習?ですね。

「実はこの漫画は2年前に描いたものなんです。2018年9月に起きた北海道胆振東部地震をうけて、北海道の作家さんで作っている同人誌『キタノステラ』のnoteに、北海道に来たくなるような記事を載せていたころの一記事です。札幌の都心部でも紅葉が盛りを迎えているニュースを見て、思い出して再掲しました」

-道民には当たり前なんですか?

「私も『観楓会』を知ったのは、ちょうど北海道に移住した頃に、友人から聞いたのがきっかけなんです。札幌郊外の定山渓温泉に、社員旅行でもなく、職場の仲間と行ったと聞いて…最初はピンときませんでした。泊まりがけで飲む催し?しかも『観楓会』なのに紅葉は観ないの?(紅葉狩りとは明確に違うらしい…)というのが驚きでした」

-楽しそうな感じですが…(笑)

「Twitterの反応でもいくつかあったのですが、『観楓会って北海道だけの慣習だったの?』と驚いている方と、『昔はやってたけど、すっかりやらなくなりましたね』という反応が目立ちました。私も北海道に住んで9年ですが『観楓会』に誘われたことはありません…。職場や町内会で催されるようなイベントなので、若くてお酒をあまり飲まない方からは好まれないのかも…と思いました」

   ◇     ◇

 確かにネットを検索すると、「観楓会 断り方」「観楓会 行きたくない」などのワードが検索上位に…。北海道の会社に勤めて30年という男性は「入社当時には既に存在していて、昔はかなりの規模でしたよ。貸し切りバスが迎えに来て、大きな温泉旅館やホテルをワンフロア貸し切って…。今では考えられないですね」と振り返ります。

 札幌の奥座敷、定山渓温泉観光協会によると「一番盛んだったのは平成に入ったころ」とか。「10月から11月初めにかけて1泊2日で来られることが多かったですが、週休2日制の導入や職場の人数が減ってきたこと、プライベートと仕事は分けたいという感覚の広まりなどで今はほぼ無くなりましたね。あっても気の合う仲間と少人数で。今は大宴会場のあるホテルや旅館もなくなりましたし、大きなビュッフェ会場で…というのも微妙ですし…」といい、コロナ禍もあってほぼ“絶滅”状態といいます。

 これも時代という感じですが「北海道の人たちにとっては秋の観楓会(紅葉狩りと称して飲み会)と対になる、春のお花見(お花見と称して野外ジンギスカンパーティー=ジンパ)という概念でとらえているようで、春のジンパはみんな大好きです」と藤沢さん。「誘ってもらえないようならそろそろ自分で観楓会を催そうかな!と思っています。もちろん、コロナ対策はしつつ、親しい仲間で」と話します。

 温暖化の影響なのか、北海道でなくても、最近の秋はどんどん短くなるような…。せっかくですし、原点に戻って、美しい紅葉を愛でながら、気の置けない人たちと食事やお酒をめいっぱい楽しみたいですね。

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