“事件”か“事故”か…唇に釣り針の刺さった猫2匹が見つかる 県警が虐待事件として捜査中

岡部 充代 岡部 充代

 兵庫県西宮市に住む小林旭子さん(仮名)宅には「半分家猫、半分地域猫」の猫ちゃんたちが数匹います。ごはんを食べるのは庭ですが、気づくと家の中に入ってホットカーペットの上でゴロリ…なんてこともあるそうです。ご近所にも猫好きさんがたくさんいて、ごはんをあげたり、病気やケガが見つかれば病院へ連れて行ったり、捕獲して避妊・去勢手術を受けさせたり…そうやって人と猫が共存しているエリアのようです。

 ところが!ある日、その中の1匹、白黒猫のオル君が、口におかしなものをぶらさげて帰ってきました。よく見ると、上唇に釣り針が刺さっていて、半透明の長い釣り糸をぶら下げています。小林さんはちょうど帰省中だった娘さんと相談して、関西圏を中心に活動するノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さん『ねこから目線。』に捕獲を依頼。到着を待ちました。

「触れはするのですが捕まえようとすると逃げるので、プロの方にお願いしました。針が刺さったままどこかへ行ってしまわないかやきもきしましたけど、『ねこから目線。』さんが来るまで仲良しの黒猫・ナナちゃんと一緒に庭に留まってくれていたのでよかったです」(娘の和美さん)

 ナナちゃんは今年5月くらいに生まれた子猫。推定1歳のオル君はお兄ちゃん役として面倒を見ているそうで、玄関先に設置した捕獲器に一緒に入ってしまうほど相性がいいのだとか。今回はオル君の保護が目的だったのでナナちゃんには捕獲器から出てもらいましたが、近いうち、ナナちゃんのTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)も考えているそうです。

「捕獲はスムーズでしたね。ナナちゃんが先に入ったのは想定外でしたけど(笑)、あっという間に捕まえてくれました」(和美さん)

 さすがは開業から2年で1000匹以上のノラ猫を捕獲し、成功率85%以上を誇るプロの仕事です。

 オル君はそのまま動物病院へ行き、釣り針を外してもらいました。幸い発見が早く、大した傷ではありませんでしたが、もし釣り糸がどこかに引っ掛かっていたら、それを外そうと暴れて大ケガにつながっていたかもしれません。誰かが故意に釣り針を置いたのか、たまたま落ちていた釣り針をくわえてしまったのかは分かりませんでしたが、和美さんはすぐに兵庫県警の『アニマルポリス・ホットライン(078-371-8974)』に電話しました。2014年1月に開設された同ホットラインは、兵庫県下で現に行われている動物虐待等の事案について相談を受け、警察官が対応するというものです。

「2年くらい前、うちの庭で猫が死んでいたときも相談したんです。もしかして、誰かが意図的に害のあるものを食べさせた可能性もあるので。そのときは死体を病院まで運んで、死因に事件性がないことを突き止めてくれました。ちゃんと動いてくれるという印象があったので、今回も電話したんです」(和美さん)

 電話の翌日、最寄りの警察署から警官が2人やって来ました。小林さん親子から事情を聞き、釣り針が刺さった状態のオル君が発見された“現場”の写真を撮るなどしたそうです。その時点では近隣で似たような事案の報告はなく、虐待事件として捜査してもらうのは難しかったようですが、約10日後、2匹目の“被害猫”が発見されました。

「すぐ警察に電話して来てもらいました。同じ形状の釣り針、同じ巻き方、同じ長さの釣り糸…これは偶然の事故ではなく、同一犯による虐待事件だと思います。警察の方も証拠品として釣り針を持って帰られましたし、捜査してくださると。聞き込みをして、ある程度の情報が集まれば張り込みをしてくれるそうです」(和美さん)

 まだ解決には至っていませんが、すでに警察による聞き込みやパトロールは始まっています。幸い、2匹目の猫はごはんを食べているとき偶然にも釣り針が外れ、傷口が化膿することもなく、以前と同じように近隣住民たちにかわいがられているそうです。そうした“地域猫”の存在を疎ましく思っている人の仕業かもしれませんが、悪意を持って仕掛けた罠だとしたら許されることではありません。動物虐待は犯罪です。

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