裁判判決時の「勝訴」「無罪」などの紙…実はレンタルされている? SNSで拡散した説を日弁連に確認した

北村 泰介 北村 泰介

 裁判所の前で「勝訴」「無罪」「不当判決」などといった判決の速報を手書きした紙を弁護士が掲げるシーンはニュース映像やドラマなどでおなじみだが、この10月初め、SNSでは、あの紙が「レンタルされている」という書き込みが拡散した。一方で否定する声もあり、諸説入り乱れる状態に。実際のところはどうなのだろうか。

 ツイッターでは「正式名称は判決等速報用手持幡。日弁連法制事務課で貸し出ししているそうです」という投稿があり、「そうだったのか」「知らなかった」などと大きな反響があった。さらに「日弁連とかで貸し出しもしてるんだよね」と後押しする声も続いたが、「どこかで貸し出しをしているという話は聞いたことない」「レンタルではなく自作しているらしい」という指摘もあった。

 そこで、「レンタル説」を唱える投稿者によって「貸し出し主」とされた日本弁護士連合会(日弁連)に問い合わせた。

 日弁連の広報担当者は当サイトの取材に対して「当連合会では『判決等速報用手持幡』及びそれに類似する物品の作成及び貸し出しは行っておりません」と回答。結論は「貸し出しされていない」ということだった。レンタル説は事実誤認であり、いずれにしても、自作で手書きした紙ということになる。

 また、SNSではその紙の呼称についても諸説が飛び交った。「びろーん」と「ハタ」という通称がクローズアップされたが、そのほか「あの紙」「巻き物」…等、さまざまだ。報道ではどう表現されているか。神戸新聞の2013年3月26日付の朝刊には「12年衆院選 無効判決(中略)『勝訴』垂れ幕 用意なし」という見出しが躍った。他の記事でも「垂れ幕」という表現だった。

 「これで決まり」といった呼称はあるのだろうか。再び、日弁連に確認したが、担当者は「当連合会で作成等をしていないため,公式にお答えをする立場にございません」との返答をいただいた。「ハタ」などの通称はその現場や人によってさまざまで、厳格に定められたものではないようだ。報道では上記のように「垂れ幕」という表現になっているケースが目についた。

 その業界で意外と知られていない事実は多く、逆に誤解されていることも少なくない。日弁連では10月1日の「法の日」にあたり,「皆様に法を身近に感じていただけるよう」(広報担当者)に「○×クイズ」を中心とする法の日スペシャルページを開設した。その内容を一部紹介してみよう。

 【初級】大学の法学部を卒業しないと弁護士になれない→「×」(弁護士として活躍する人の中には法学部出身でない人もたくさんいます。文系学部だけでなく理系学部を卒業した人も弁護士として活躍しています)

 【中級】日弁連は法務省の管轄下にある→「×」(日弁連は、国家機関からの監督を受けない独自の自治権を有し、この自治権のもと、弁護士等の指導、連絡、監督を行っています)

 【上級】弁護士費用が保険金として支払われる保険がある→「○」(保険の契約者が事故被害に遭い、弁護士に法律相談や交渉等の依頼をした場合、その費用が保険金として支払われる保険『弁護士費用保険(権利保護保険)』があります。自動車保険の特約として販売される例が多いですが、近時、対象範囲を拡大した新商品も登場しています)

 今回のテーマに当てはまれば、「判決時に掲げられる『勝訴』などの紙は日弁連で貸し出しされる?」という問いになり、回答は前述の通り「×」となる。「法」の世界は奥深い。日弁連のスペシャルページには様々な事例が紹介されている。

【法の日スペシャルページのリンク】

https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/lawday/index.html

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