尊厳を傷つけられてまで応じる義務なし…不当な職務質問への対策マニュアル

中将 タカノリ 中将 タカノリ

ミュージシャンの 岡崎体育 さんが7月3日の誕生日を迎えた瞬間、警察による 職務質問 を受けたことを明かし話題になっている。岡崎さんは自動車を運転していたところパトカーに停車を命じられ財布を確認されたり職業を問われるなどしたようだ。

「誕生日になった瞬間は、職務質問されていました。運転していた車が京都ナンバーだったのと、パトカーが横を走っていてもこちらを一切見なかったから止めたとのことでした。財布を確認され、職業を聞かれました。「歌手です」と言ったらすっごく疑り深い目で見られたので、頑張ろうと思いました。」

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実は僕も先日、兵庫県神戸市のJR神戸駅前で身をもって職務質問を 「取材」 するはめになった。

路上で電話していたところ、近づき顔をのぞき込んできた警官A。大きなマスクをしていて顔がわからなかったが、警察に知り合いがいないでもないので「なにか?」と応じたら 「カバンの中を見せてください」 と。電話中なのでと断ったら、警官Bも加勢に来て、その後約3分間押し問答が続いたのだ。

先方に申し訳ないから一旦電話を切り「電話中に失礼でしょう。そんな相手に協力したくないし鞄は見せません」と宣言する僕。すると「なにか見せられない理由があるのか?」と食い下がる警官たち。犯罪のでっちあげや不当逮捕の危険性を感じた僕は以後、警官たちが退散するまでスマホでこの降って湧いた職務質問の模様を撮影し続けた。

警官たちの言動は終始おうへいで身勝手なものだった。

「撮影はやめてもろてええですか?」
「(所属、氏名を尋ねたら)撮影されとってうちらも言わんでしょ」
「(動画を)目の前で消してくれるんですか?」
「(自分も)家に帰ったら個人なんですよ」
「あなたの理由はどうでもいいんですよ」
「あなたのことを撮影していいのか?」

名乗りもなく理由も言わず、電話を遮ってまで他人にカバンの中身を見せろというマナーの悪さ。それに公人として勤務中に、表情もわからないようなでかいマスクをしておいて何がプライベートだ。往来の中で警官から威圧的な職務質問を受けているこちらのプライベートはどうなるのか。

怒り心頭に達した僕はその後、どうにか聞き出した警官Bの所属と姓を頼りに兵庫県警本部にクレームを入れ、後日、彼らが所属する機動パトロール隊の上司から 「不適切な職務質問でした。指導した結果、2名はたいへん反省している。」 という謝罪を勝ち取った。

今でも思い出したら腹が立つが、これが僕の職務質問「取材」録だ。

職務質問は

「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」

警察官職務執行法2条1項

という「警察官職務執行法2条1項」を根拠に実施されている。

しかし同項では同時に、職務質問には

「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」 「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」

警察官職務執行法2条1項

など客観的に正当な理由が必要であると定めており、それがみだりにおこなわれないよう厳しく制限している。客観的に怪しげな様子が認められない者が職務質問を受けるいわれはない。

また「警察官職務執行法2条3項」に

「前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」

警察官職務執行法2条3項

とある通り、警官は逮捕令状もないのに市民を拘束したり捜査を強行することはできない。職務質問に応じるかどうかはあくまで 任意 なのだ。

それにもかかわらず、警官が 強引な職務質問 をおこなう例は後を絶たないようだ。いろいろ調べていると、拒否したにも関わらず途中で解放された僕は、運がいい部類だったと思わされるくらい。

というのも職務質問は警官にとってノルマを課せられた業務。それを遂行するためにはさまざまな権限を拡大解釈し、引き留め行為や同意を得ない所持品検査もいとわないという風潮が組織の一部に蔓延しているのだ。ひどいものになると、 軽犯罪法違反や公務執行妨害をでっちあげられたケース もある。

読者のみなさんが不利益を被らないために、職務質問を受けた際に覚えていてほしいポイントを以下にまとめた。

・あくまで冷静に対話する(余計な突っ込みどころを与えないため)

・動画撮影、もしくは録音をしてやり取りを記録する(裁判になっても大丈夫なよう正当に職務質問に応じた証拠を作るため。また犯罪のでっちあげを防止するため)

・警察手帳の提示を求め、所属と名前を確認する。また都道府県の警察本部に照会して、その人物が実際に在籍するか確認する(相手が偽警官である可能性があるため)

・こちらから警官の身体に触れない(公務執行妨害を適用されるおそれがあるため)

・引き留めが長引いた場合、また所持品検査を強行されそうになった場合は弁護士事務所、法律相談所に電話する(警官の横暴を抑止し、今後の展開に備えるため)

手間という面ではなされるがまま職務質問に応じたほうが楽だし早く解放されると思う。しかし僕のように警官の態度に不快感をおぼえた場合や尊厳を傷つけられていると感じた場合はそれを拒否することも正当な権利。市民として警察組織を正しく導くためにも、権力の横暴に対しては毅然とした姿勢をつらぬくべきではないかと考えるのだ。

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