なにこれ可愛すぎ…猫と穴の写真集が爆笑必至 一流スポーツカメラマンが明かす撮影秘話

山本 智行 山本 智行

 九州の離島で自由奔放に暮らす野良猫の姿をユニークな視点でとらえた写真集「あなねこ」(集英社)が発売から2カ月がたった今も好評だ。厳選80作品はどれもほっこりしたり、クスッと笑えるものばかり。現在は福岡ソフトバンクホークスのオフィシャルカメラマンとして活躍する“猫写真家”の繁昌良司さん(59)に撮影の舞台裏を聞いた。

 こりゃたまらん。見ているだけで心がなごむ。8月末に集英社から出版された写真集「あなねこ」(1540円)はフリーカメラマンの繁昌さんが4年をかけ、九州・沖縄12の離島を巡って、カメラに収めたものだ。

 タイトルにあるように徹底的に「穴」にこだわったものばかり。小さな穴からひょっこり顔をのぞかせたり、穴に入ろうとして無防備なお尻がぷりっと見えるシーンなど、ほのぼのとして、どこかコミカルな作品に仕上がっている。

 「最初は興味本位でしたが、島を訪ねると岩場から生き生きとした猫が現れて、おもしろいと思ったんですよ。島の美しい風景にもハマって4年間で50回ぐらい通いました」

 もともとは犬派だったというが、15年ほど前からライフワークのように野良猫を取り続けていた。「だれにもこびることなく、自由に現れて、もらうもんだけもらって自由に去って行く。同じようなフリーランスの仕事をしている者として、その生き様が格好いいなと思ったんですよ」

 しかし、あくまでも趣味の領域。それが米メディアCNNに「世界6大猫スポット」として福岡県の相島(あいのしま)が選ばれたことを知り、離島の猫にフォーカスするようになる。仕事の合間や出張などで九州各地を訪れた際に藍島、深島、浮島と言った島に足を伸ばしたが、撮影には苦労がたえなかったようだ。

 「フェリーは1日3便とかなので滞在時間が限られます。天候が悪いと予定が狂いますし、夏場は暑くて猫が外に出てこないので撮るのは基本的に春か秋になりますし、時間帯も朝か夕方。出発前には天気予報とにらめっこしていました。ほとんど撮れずに帰ったこともありますよ」

 繁昌さんが得意にしているのは、スポーツカメラマンらしく「野性味たっぷりでスポーティーな猫がジャンプ」する場面。週刊誌で取り上げられ、高い評価を受けており、見た人も多いのではないだろうか。今回の写真集は出版サイドから「前例がないものを」という提案もあって「猫と穴」をテーマにしたが、島に着いてからの撮影は大変だったようだ。

 「離島の猫は街の地域猫と違って、逞しいし、人に慣れていないのでエサで誘っても寄ってこない。仲良くなれたかなと思って近寄ると、ひっかけられて出血したこともあります。穴からいつ出てくるか分からないし、20分以上待つこともざらでした。しかも、穴に出入りする動きは想像以上に速く、5000分の1秒の超高速シャッターを切ることで、確実にブレてない姿をとらえられるようになりました」

 実際、表紙を飾っている写真は今まさに穴から飛び出そうとする瞬間をとらえたものだとか。

 「高速シャッターで止めているからこそ、顔をちょこんと出しているようなユニークな写真に見えるんです。自分の中では奇跡の一枚。周東選手の走塁や甲斐キャノン、柳田選手のインパクトの瞬間を撮る感覚でシャッターを切っています」

 なるほど、血走ったような猫の目を見ると、のんびりと顔をのぞかせている場面ではないことが分かるが、それが何ともコミカルだ。

 「写真を見た人がみんな笑えた、と言ってくれるのでうれしいですね。明るくて漫画チック。コロナ禍ですし、みなさんに喜んでもらえれば幸せです」

 そんな繁昌さんは腕を買われ、現在は福岡ソフトバンクホークスのオフィシャルカメラマン。これまでに10冊の著書があり、その中にはホークス時代の城島健司、川崎宗則や九州所属ジム初のボクシング世界王者・越本隆志の写真集などがある。

 「いまはコロナでお年寄りの多い離島になかなか行けませんが、落ち着いたらまだ行っていない九州の離島を訪ね、猫の写真集第2弾を出せればいいですね。それともうひとつ、球団の許可をもらって、超カッコいいギータ(柳田選手)の写真集をぜひ、出したいです」

 どちらの作品も待ち遠しい。繁昌さんの二刀流はしばらく続きそうだ。

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