人数制限緩和されても未だ厳しいフードイベント業界 出展する飲食店がかかえるリスクとは?

中将 タカノリ 中将 タカノリ

政府が9月19日からの各種イベントにおける人数制限緩和を発表した。

コロナ感染拡大以降、大規模イベントは入場者を5000人までに制限されていたが、今後は会場の収容人数の50%まで集客ができるようになる。

しかしこれで以前のようにイベントが開催できるかと言うと、そんなに簡単に事は進まないようだ。特に近年、人気を集めていたフードイベントについては現時点ではまだまだ出展する飲食店のリスクが大きく、オファーがあっても二の足を踏むケースが多いという。フードイベントに出展する飲食店のリスクとはどんなものなのか、大阪のカレー店「NOMSON CURRY」店主の野村さんにお話をうかがった。「NOMSON CURRY」はコロナ感染拡大以前、数々のフードイベントに出展し、評判を取ってきた人気店だ。

中将タカノリ(以下「中将」):NOMSON CURRYさんは今後、フードイベントに参加のご予定はありますか?

野村:政府のイベント開催制限緩和の報道を受けて早速、数件フードイベントやフェス等のお話を頂きました。ですが参加については昨今のコロナ禍の影響も気になりますので情勢を見ながらの判断になりますね。

中将:やはり規制緩和されたからすぐイベント出展というのは難しそうですか。

野村:色々とありますが、先ずは集客するにあたり会場の収容人数の50%を踏まえた上で、平時のイベントより売上げ見込みがかなり減ってしまいます。運営規模によりますが、入場制限をかけながらのイベントとなると恐らく今までの半分以下の売上げになると予想しています。

また、落ち着いてきたとはいえイベントから感染者を出してしまうと、お店の看板を背負って出店しているので風評の煽りを受けそうで怖いですね。

中将:たしかに売上が少ないとわかっていて出展する気にはなれませんね。しかも風評被害のリスクもあるとなると……。

野村:店外での出店の場合、店舗とオペレーション(食品の提供手順や衛生管理など)が違うので気を使うことが多いです。また、食品の輸送コストや人件費、資材費(お皿やスプーンなど)にもお金がかかります。遠方の場合、人件費の他にスタッフの宿泊費や食事代、イベント会社からの出店費用もあり、提供価格は運営側に決められるので最終的に売上の50%は運営サイドの取り分となります。

天候などにも売上げは大きく左右されますし、もちろんイベント会社は個人店に対して売上げの補償をしてくれるわけでは無いのでコロナ禍のことを考えると平時とは違いリスクは大きいと思います。仕込みの量も普段のお店の仕込みの何十〜何百倍になりますので、仕入れの金額に見合う売上げ出ないと店舗の経営が傾きかねないですね。

中将:コロナに関わらず、イベント出展自体がそこまでハイリスクだったとは気付いていませんでした。天候などの理由でイベントが中止になることもありますよね。

野村:去年の秋以降の大型イベントは台風で中止になることが多かったんです。当店はたまたま屋内のイベントが多かったので影響ありませんでしたが、同業者が参加を予定していたイベントが雨で流れて仕込んだ食品が全てダメになったという話を聞きました。冷凍して長期保存が出来るとはいえ、コロナ禍で長い間イベントが出来なかったので、保存していた食材も廃棄せざるを得なかったという話もよく聞きます。

中将:これからイベントが緩和されても、天候に加えコロナ再拡大による中止も想定しておかないといけませんね。しかしここまで出展者にメリットが薄いとなると、以前のような活気あるフードイベントの実現はまだまだ難しそうですね。

野村:この御時世なので、イベント会社の運営も大変なのは承知しています。ですが我々個人店もコロナ禍を乗り越えつつあるとはいえ、まだまだ厳しいのが現状です。たくさんのお客様が来て下さる中、美味しいフードを提供してイベントを盛り上げるのに一役を買えるのは飲食店冥利に尽きますが、個人店を守るために適正な集客見込みや出店にかかる費用の見直しもお願いしたいですね。

「裏ポンバシ系スパイスカリー NOMSON CURRY(ノムソンカリー)」

挽きたてのスパイスと多種多様な出汁や食材で作る一期一会な日替りスパイスカレー専門店。作るカレーは毎日、店主の気まぐれ(大喜利)によって決まる。店主の弟は吉本芸人の令和喜多みな実の野村(ボケ)。

所在地:大阪市浪速区日本橋東1-11-2
店舗公式Twitterアカウント:https://mobile.twitter.com/NOMSONCURRY
※日替りのカレーやイベント情報、売り切れ情報など発信中

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野村さんのお話をうかがって、このコロナ禍のもとフードイベントが抱えている問題点が見えてきた。以前のようなフードイベントの実現は、イベントを主催する業者のシステム見直しや行政やスポンサーのてこ入れがなければとても成し得ないことのように思える。良い形での状況好転を願いたい。

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