エンタメ業界の救世主となるか? 新感覚のライブ配信サービス「Live Cloud」

中将 タカノリ 中将 タカノリ

新型コロナの影響を受け、依然として厳しい状況が続くエンターテイメント業界

9月19日にはようやく各種イベントの入場制限緩和が発表される見通しではあるが、依然として関連業者の多くは存続の危機に瀕しているのが実情だ。タレントやそのファン達もこの状況に際してどのような活動をしていいのか混迷の底にいる。

そんな中、大阪のあるタレント事務所が立ち上げたライブ配信サービス「Live Cloud」が、この状況の打開策となりうる新しい形態のライブ配信だとして話題になっている。

これまでにもライブ配信サービスは多々存在した。「Live Cloud」は従来のサービスとどういった違いがあるのだろうか?

僕は「Live Cloud」のライブ配信イベントを取材した上で開発元である株式会社SAKURA entertainment福本裕介さんにお話をうかがった。

株式会社SAKURA entertainmentは「Le Siana」「Culumi」といったアイドルグループから元ハリガネロックおおうえくにひろさんのようなベテランまで幅広いタレントを抱える新進気鋭の事務所だ。

中将タカノリ(以下「中将」):コロナが流行して以来、ライブ、イベント業界はとんでもない状況になってしまいましたね。

福本:一時よりは感染拡大が収まって出演者やお客さんもイベント参加への安心感は増していると思います。ですが会社としてはタレントをイベントに出したいけど、まだまだ判断が難しい状況です。

中将:やはりマネジメントする側として難しさを感じられますか。

福本:映画やテレビの撮影であれば、業界のガイドラインを元に責任者がルールを設けて、出演者やスタッフがそれをしっかり守るという前提で進みます。撮影現場に入れる人数制限、定期的な換気、2週間の行動記録、役者と接触をしなくてはいけないメイクや衣装さんはどのようにするか……など感染予防のためいろんな対策をします。また出演者を出す事務所側も感染対策はしっかりしているかなど確認をするので2重の安心があります。

しかしイベントになると回数も頻繁ですし会場も様々です。音楽イベントのガイドラインもありますが、「マイクを使いまわさない」、「出演者同士が密にならない楽屋の確保」などを徹底するのは現実的に難しく、私たちもイベントの主催や出演についてずっと悩んでました。

中将:何か起これば世間や関係者からの批判も予想できますし、会社組織としては二の足を踏んでしまいますよね。

福本:そこで弊社ではコロナ禍における活動方針として、出演者、お客様、スタッフと全ての人の安全と安心を一番に「家での時間を楽しんでもらう」ため配信番組の制作、提供を行うという目標を定めました。自粛期間中からオンライントークライブの配信を行うなどライブ配信事業に積極的に取り組み、6月にはこの独自の動画配信サービス「Live Cloud」を立ち上げました。

その取り組みの中で、ライブ配信は音楽のみならず演劇やアマチュアスポーツなど広いジャンルで活用できるサービスになる可能性を感じました。また同時にライブ配信のメディアとしての可能性に気付かずに埋もれてしまっている配信も沢山ある事にも気付きました。

中将:たしかにタレントが一人でおしゃべりするだけの配信は多いですね。

福本:そこでLive Cloudでは「番組を作る」という気持ちで配信者が良いコンテンツを作りやすい、コンテンツを作るためにマネタイズがしやすいサービスを目指しました。

複数の出演者が出演するブッキングイベントや、複数の会場を1チケットで回ることのできるサーキットイベント、ファンクラブ特典の付与なども容易です。コロナ以前のような感覚で集客やイベント企画、マネタイズができるようになり、お客さんにもよりイベントの醍醐味を味わっていただけるのではないかと思っています。

中将:ふだんイベントをする側、イベントに行く側の目線に立っている点でLive Cloudはライブ配信サービスとしてとても良心的だと感じます。
8月23日にはSAKURA entertainmentと松竹芸能とのコラボ配信イベントを取材させていただきましたが、イベント自体の企画内容も良かったし、配信サービスという面でもテレビ顔負けの機能性を感じました。

「オンラインバトル Comedy Cloud!」(イベントの模様はこちら)

福本:ありがとうございます。ライブや漫才の模様を配信するだけでなく、別会場にいるタレントにZOOMでワイプ出演して審査してもらうなど新しい試みができました。これまでテレビや大手メディアにしかできなかった事が誰にでもできるようになったことを証明できたのは画期的ではないかと思います。

8月23日はあのイベント配信と同時に、全国小学生バドミントン選手権大会の大阪府予選の配信もおこなっていたんです。こちらもライブ配信の可能性をひしひしと感じた1日でした。

中将:どのような可能性でしょうか?

福本:選手権なので同時に複数の試合が進行するのですが、Live Cloudでは5コート分の試合を同時に生放送しました。これはテレビで実現するのは困難なので、ライブ配信だからこそ実現できた放送のあり方だと思います。

またこういった選手権は観客が選手のご家族であることが多いので、会場まで足を運ばなくても応援できるというのはテレワークに通じるものがあると感じました。コロナへの感染リスクが減らせますし、お仕事や体調の都合で会場まで足を運べない方も自宅でお子さんやお孫さんを応援できます。ライブ配信はコロナ以後においても多くの方に活用していただける形態なんじゃないかと感じました。

中将:ライブ配信だからこそ実現できることがいろいろありそうですね。

福本:コロナが完全に終息した後も、コンテンツを遠くにいる人に届ける、人と人を結びつけるという事は普遍的な需要として残ると思います。Live Cloudが今後さまざまな所で役に立てるサービスになって欲しいと願っています。

『株式会社SAKURA entertainment』
所在地:大阪府東大阪市足代新町4-12 テレビル4階
公式サイト:http://sakura-ent.com/
Live Cloud:https://livecloud.jp/

◇ ◇

インタビュー中でも触れたが、僕は8月23日に「Live Cloud」を用いた株式会社SAKURA entertainmentと松竹芸能のコラボイベント「Idol Cloud」「Comedy Cloud」を取材した。関西を中心に活動するアイドルグループたちとお笑い芸人たちが互いにパフォーマンスを観て、投票しあってグランプリを決めるというバトル形式のイベントだ。

マスク着用、検温、消毒など万全の感染対策をした上で試行錯誤し、最高のパフォーマンスを見せる出演者とスタッフたち。その光景は最近のありふれた怠惰なライブ配信などとは異なる、僕が慣れ親しんできたエンターテイメントの現場そのものだった。コロナ禍がエンターテイメント業界に与えた諸問題の打開策となり得るこの「Live Cloud」。今後の一層の普及を期待したい。

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