京都市に暮らす柴犬のジェームスJr.君はこの夏、山口県岩国市の観光大使を委嘱されました。岩国は飼い主である高谷美和さんの故郷。先代犬のジェームス君が2016年5月から19年2月に亡くなるまで犬として初の観光大使を務めており、Jr.君はその後任として大役を任されたのです。
高谷謙次さん、美和さん夫妻がJr.君と出会ったのは昨年10月。なかなか里親の見つからない柴犬がいると隣人から聞きました。ジェームス君を亡くして8か月。謙次さんは自身の年齢を考えて、もう犬は飼わないと決めていたそうです。一方の美和さんはジェームス君に似た中型犬を密かに探していて、四国に候補犬を見つけていましたが、予定していた“お見合い”が台風で延期に。そんなときに舞い込んだのが里親募集中の柴犬の話でした。
2人が会いに行くと、Jr.君はビルの階段にポツンと座っていたそうです。最初の飼い主は外国人留学生で、日本で就職する予定が帰国しなければならなくなり、アルバイト先の会社社長にJr.君を託したそう。でも、その社長は自宅には連れて帰ってくれず、日中は会社が入っているビルの階段がJr.君の“居場所”になりました。朝と夕方、排泄のために外に連れて出てもらってはいましたが、それも10分程度で、スタッフの退社後は電気も冷暖房も切られて、真っ暗なビルの中、ひとりぼっちで過ごしていたそうです。
「話を聞いて涙が止まりませんでした。途中で採用された日本人スタッフが夏の朝、出勤すると、ハァハァ言いながら出てきたそうです。『今日は死んでいるかもしれない』と、ドキドキしながらドアを開けていたと言っていました」(美和さん)
その会社は輸出業を手掛けていたのですが、Jr.君が商品にオシッコを掛けてしまったり、発送した商品に犬の毛が入っていたとクレームが来たり…社長は怒って「もうこの犬はいらない!犬がいっぱいいるところに連れて行く」と言い出しました。「犬がいっぱいいるところ」と聞いて保健所を思い浮かべた日本人スタッフは、あわてて「里親を探すから待ってほしい」と社長を説得。すでに5歳が近かったこともあり里親探しは難航しましたが、1か月半ほどたって高谷夫妻につながったのです。
「一時の感情で引き取るのはやめようと話していたので『検討します』と言って会社を出たのですが、車に乗って数分で『うちに迎えます』と電話していました(笑)」(美和さん)
ジェームスJr.君誕生の瞬間でした。
先代のジェームス君は岩国市の観光大使だけでなく、FM京都で『J&M THEATER』という番組を持ち、世界初?のワンちゃんDJを務めたり、音楽イベントにゲスト出演したり。テレビドラマやバラエティー番組にも数多く出演し、関西を中心に活躍していました。
そしてもう一つ特筆すべきなのが、東日本大震災が発生した11年から続けていた義援金活動です。ジェームス君の日常を歌った『ジュマペール・ジェームス』『ジェームス・モナ・ムール』のCD売り上げや、15年から制作を始めたオリジナルカレンダーの売上金を全額、動物愛護のために寄付していました。
「動物が動物のためにできることはないかと考えて始めました。ジェームスも元は捨て犬。そんなジェームスが“殺処分”を減らすことに貢献してくれていたんです」(謙次さん)
高谷夫妻はジェームス君の一周忌にあたる今年2月7日、Jr.君と一緒に京都動物愛護センターに寄付金の目録を届けました。来年のカレンダーはジェームス君とJr.君、両方の写真が掲載されていて、今後はJr.君がこの活動を引き継ぎます。
また、ラジオ番組も今年1月に『NEW J&M THEATER』としてリスタート。毎週水曜20時30分からJr.君に関する楽しいトークが繰り広げられています。もちろん、番組内では岩国の観光大使としてPRも怠りません。
「お兄ちゃんに負けないように、ラジオはもちろんSNSでも岩国の魅力をしっかり発信していくワン! ラジオはradikoプレミアム会員になってくれれば、京都以外でも聴くことができるワン! チャリティーカレンダーも好評発売中だワン!」
ジェームスJr.観光大使はやる気満々です。