お家に2匹目の猫を迎える時には気をつけて…出会いがストレスになることも 14歳・チャピちゃんの場合は…

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

猫は一般的には、気難しい動物だと思います。猫を飼われている方の中には、『もう1匹欲しいなぁ…』とお考えになることもあると思いますが…『2匹目』を迎え入れる場合、注意が必要です。先住の猫は、自分の安住の地に知らない猫がいる!それだけで超ストレスです。とにかく、少しずつ少しずつ、慣れされることが大切です。

チャピちゃんは、今月14歳になる三毛猫(メス)です。家族に、とても愛されています。現在、家には猫はチャピちゃんひとりですが、実は2年前に、小さい頃からずっと一緒に生活してきた白猫のリンちゃん(メス)をガンで亡くしました。リンちゃんとチャピちゃんはとても仲良しだったので、ひとりになった後は、しばらく飼い主のお母さんに近寄らなくなり、心が乱れているようでした。そんなチャピちゃんも、2年という時間が癒してくれたようで、今は落ち着いた生活を取り戻していました。

お母さん自身の心も落ち着き、『そろそろもう1匹、飼っても大丈夫かしら?』と思いはじめて探していたところ、沖縄生まれのとっても美人なムギちゃんに出会いました。さっそくトライアルでお家に連れて帰り、その日はケージに入れて、新しい家に慣れてもらうことにしました。

翌日、外に出たがったのでケージから出すと、若さゆえの怖いもの知らず、好奇心旺盛なムギちゃんは、家の探検に大忙しでした。一方のチャピちゃんは、知らないちっこい猫がチョロチョロしているのですっかり怯えてしまい、2階から全く降りて来なくなってしまいました。

人間に例えると、72歳のおばちゃんがひとり暮らししている家に突然、小学2年生の女の子が土足で家に乱入してきた…といった状態でしょうか?それは、おばちゃんは疲れますよね。心乱れますよね。

それから数日後、相変わらずずっと引きこもりチャピちゃんでしたが、食欲もなくなり、水もあまり飲まなくなり、そして何故だかしきりと歯ぎしりをするようになりました。少しだけ食べては、ギリギリシャコシャコキュッキュッ…前肢で口を掻きむしる動作をすることもありました。そして、2階の部屋から一歩も出てきません。

お母さんは心配して、チャピちゃんを私の動物病院に連れて行きました。口の中には軽度の歯周病は有りましたが、食欲が落ちるほどの痛みは出ないと考えられる程度のものでした。もちろん、腫瘍もありませんでした。私は、ムギちゃんが来たことによる精神的なストレスで知覚過敏になったという診断をいたしました。

それでも、食べなければ体重は減り、飲まなければ脱水してしまいます。みるとチャピちゃんはげっそりと痩せて、毛もボサボサになっていました。精神的に落ち着くまで連日、点滴と心を落ち着かせる漢方薬を飲ませ、栄養満点のスープも、口をこじ開けて飲ませました。

しかし、お仕事が忙しいお母さんには、連日の通院は大変でした。自宅でチャピちゃん自身に針を刺さなくても点滴が出来るように、チューブを背中に入れる方法があります。これはとても便利ですが、背中の皮膚に切れ目を入れて、人工的なチューブを差し込み縫い付ける(写真矢印)、見た目は胃ろうのチューブのような感じです。

私は、そのチューブをチャピちゃんに入れることも出来ますとお母さんに説明しながら…これをつけると、お母さんがリンちゃんとの闘病生活を思い出してしまうなぁと気づきました。

リンちゃんは鼻の奥にガンが出来て、食べたいのに食べられなくなりました。最期には、首から食道にチューブを入れて、お母さんが毎日流動食を入れるという介護をされていました。

まさに、同じような姿…それでなくとも、どんどん弱っていくチャピちゃんを見ていると、あの頃のリンちゃんと重なってしまうことでしょう。

私は、そのチューブの説明を終えましたが、『まあよく考えてみてください。』と締めくくり、特にチューブをつけることを強要はしませんでした。

お母さんは、チューブをつけるか通院するか悩み、食べないチャピちゃんに眠れない日々が続きました。私は、『チャピちゃんはどうですか?チューブどうします?リンちゃんを思い出しちゃうもんね…』と話しをしました。そして、さらに数日が経った頃、チャピちゃんは自分から少し食べるようになりました。

ムギちゃんが来てから2週間が経つ頃、チャピちゃんはようやく現実を受け入れたようで、食欲もゆっくりと回復し、歯ぎしりの回数もゆっくりと減ってゆき、ムギちゃんとの距離も縮まっていきました。

今朝、ようやく並んでごはんが食べられるようになりました。

お母さんはとても心配されておられましたが、私は笑って…『良くあることです。餓死は、まずありません』と説明し続けました。2匹目を迎えるときには、本当によくある『病気』なのです。でも、時間という『お薬』がとても良く効く病気です。

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