「菅首相」誕生か 本格政権確立へ年内解散総選挙の可能性も…焦点は選挙時期と選対委員長

須田 慎一郎 須田 慎一郎
菅官房長官=2020年4月17日撮影(提供・共同通信社)
菅官房長官=2020年4月17日撮影(提供・共同通信社)

 安倍晋三首相の辞任表明を受け、9月の自民党総裁選の概要が固まった。ポスト安倍レースは菅義偉官房長官の次期首相就任でほぼ決まりという状況だ。では、今秋以降の政局を左右するポイントは何か。ジャーナリストの須田慎一郎氏は当サイトの取材に対し、菅氏が安倍首相の残りの任期1年を埋める「リリーフ」ではなく、自身の「本格政権」を実現するためには「選挙のタイミング」と「選対委員長」の人事が焦点になると解説。さらに、年内解散総選挙の可能性も示唆した。

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 自民党の総裁選でいうと2つのパターンがある。1つは、複数の派閥の協力を得て総裁になること。2つ目は、派閥の協力がなく、フリーハンドで出馬して当選するケース。5年5カ月、総理の座にいた小泉純一郎氏は出身派閥の清和会の協力を得られなくてもサプライズ当選した。第2次政権時の安倍晋三氏もフリーハンドで出て総理になった。

 この第2パターンはイレギュラー。党員票を呼び込むと想定外のことが起こりかねず、今回で言うと石破茂氏がサプライズを起こしかねない。主流派の二階派、麻生派、細田派は菅官房長官を新総裁にというコンセンサスがあるため、菅氏が間違いなく総理になるだろう。そして、安倍政権の方向性を継承していくことになる。

 そこで、政策面のみならず、政権と自民党の枠組みに注目していきたい。幹事長はおそらく二階俊博氏の続投になるだろう。また、あまりマスコミには注目されていないが、菅政権において、次の総選挙に向けて選対委員長というポストに誰が就くかが焦点になる。選挙の実務を仕切る人物である。候補として二階派の重鎮である平沢勝栄氏も浮上するが、実務に長けていない。現職の下村博文氏が続けるのか、あるいは他の人物になるのか。

 次期首相は菅氏という流れで固まった。むしろ注目すべきは次の解散総選挙がどういうタイミングになるかだ。来年9月が新総裁の任期、10月が衆院議員の任期で、遅くともこの10月までになる。任期は安倍首相が残した1年で、菅氏はイレギュラーの危機管理内閣を率いるリリーフで終わるのか?そうではなく、菅氏が本格政権を確立するためには「選挙に勝つ」ことからやらねばならない。

 選挙は「勝てる時にやる」のだ。「追い込まれ解散」では、政権与党が議席数を減らし、菅氏の影響力は落ちるので、それは回避したい。来年1~3月は予算編成期で、4~6月の間に選挙を打っても、追い込まれ解散になりかねないので、今年のうちに選挙をやる可能性もある。野党合流もまだ体制が整っていないうちに。菅氏は総理になっても、頭の中には「次の選挙をいつやるか」があるだろう。選対委員長は下村氏のままとして、早いタイミングで年内に解散総選挙を打つことも考えられる。

 いずれにしても、選挙に勝たなければ菅氏の力はなくなり、流れが石破氏に傾くだろう。コロナ禍における経済対策は引き続きしっかりやりながら、ポイントは「選挙のタイミング」と「誰が選対委員長をやるか」ということになる。

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