香港はどうなってしまうのか?中国の全国人民代表大会(全人代)は反体制活動を禁じる「香港国家安全法」を可決し、閉幕した。早ければ今夏に施行され、中国は国家安全に関する機関を香港に設置し、直接取り締まりができるようになる。1997年の中国返還以来、高度な自治が認められ、香港の繁栄を支えてきた「一国二制度」が形骸化の危機だ。
中国の力による治安強化に対し、香港が揺れている。日本の国会にあたる中国の全国人民代表大会(全人代)が5月28日、「香港国家安全法」を採択した。「賛成2878票、反対1票」。直後、香港の友人からメールが届いた。
「香港が終わりました」
続けて、こんな追伸があった。
「心配しないでください。私は来年、日本に引っ越します」
友人は九龍半島側に住む50代の証券マン。子どもが2人いる。切迫した状況が伝わってきたのはいうまでもない。それほど、今回の決定は香港人にとって衝撃的だったのだ。
今回採択された「香港国家安全法」は香港での反体制活動を禁ずる法。禁止の対象は国家分裂や中央政府の転覆、テロ行為など、おどろおどろしい内容で早ければ、今夏にも施行されるとみられている。
中国寄りとされる香港政府は「対象となるのはごく少数、香港の自由は損なわれない」としているが、これを理由に今後は集会やデモ行為の禁止、言論統制が一段と厳しくなるのは間違いなさそうだ。欧米各国が反対するのも当然だろう。
現在はコロナ禍のため、逃亡犯条例に反対した昨年のような大規模なデモができない状態が続いている。それでも27日には中心部セントラルの金融街で抗議デモがあり、中国からの独立を連呼していたという。
一部には治安が安定することを喜ぶ人々もいる。しかし、金融センターとしての役割を果たすことができているのも高度な自治が認められているからこそ。このままだと香港の繁栄を支えてきた自由を失いかねない。友人もその点を危惧していた。
―香港はどうなっているのでしょう?
「いま、香港で何が起こっているのかを説明するのは非常に難しい。香港は分裂し、一部の人々は法律で暴動を止めることができる。しかし、北京での新しい法律のために多くの暴動がこれから起こるでしょう」
―これまでのように人々の力ではね返し、自由を守れないのか?
「今回の法律は香港政府の上を飛び越えて北京で決まったもの。ある意味では違法行為。法律が成立すれば、中国は誰でも本土に連行して裁判にかけることができる。一国二制度を50年守ることになっているのに、そんなことが許されていいんでしょうか」
―海外に移住する人が増えるのですか?
「台湾などを中心に引っ越す人はいまも増えています。昔の香港ではなくなった。法律が決まれば、多くの富裕層は香港には残らないでしょう。私にはどれくらいの人が海外に出て行くのか分かりませんが、アジア太平洋地域の金融ハブという点では香港の地位は低下し、東京やシドニーに取って代わられるのではないでしょうか。中国に飲み込まれようとしている。香港は終わりました」
友人の声が一部であることを望みたいが、おそらくはそうではないだろう。自由で活気溢れる香港はなくなってしまうのだろうか。