警戒心が強い黒猫を保護 1週間キャットタワーの上で“籠城”した後、突然甘えん坊に変身

渡辺 陽 渡辺 陽

1匹の黒猫がマンションのエントランスに現れた。顔の毛ははげていて、猫風邪をひいて鼻水を垂らしていた。マンションの住人の知華(ちか)さんは、「里親はみつからない。私が飼う」と決めて捕獲作戦に乗り出した。

マンションのエントランスに現れたボロボロの猫

2007年12月末、1匹の黒猫の子猫が大阪市内のマンションのエントランスにいた。いつの間にか中に入ったようだった。生後6カ月くらいで、肌は疥癬でボロボロになり、顔と首の後ろの被毛はすっかりなくなっていた。猫風邪もひいていて鼻水を垂らしていて、あまりにも酷い状態なので目を引いた。住人の知華さんは放っておけなくなった。

キャリーバッグにフードを入れて捕獲しようとしたが野良猫なので警戒心が強く、なかなか捕まえられなかった。知華さんは、仕方なく餌付けすることにした。黒猫はずっとエントランスにいたわけではないが、出たり入ったりしていた。一週間くらい毎日フードを与え続けたり、便利屋に捕獲を依頼したりしたが、一向に捕まらない。

知華さんは、クーちゃんのことを保護する前からうちの子にすると決めていた。

「皮膚の状態もひどくて、身体は大きく、月齢6カ月。譲渡するのは難しいと思いました。(先住猫の)キララも自分で保護しましたし、どんとこいという感じでした」

完全拒否から甘えん坊の猫に

年が明け、1月6日、友人が捕獲器を持ってきてくれたが、黒猫は用心深く、捕獲器に向かってシャーシャー威嚇した。一向に入る気配がない。コンビニで売っている唐揚げを持って知華さんが捕獲器の前に座ると、知華さんには気を許していたようで、やっと捕獲器に入ったという。

知華さんは2匹のスコティッシュフォールドと保護猫のキララちゃんを飼っていた。黒猫は他の猫とは隔離したが、ずっと狭いスペースにこもって隠れていた。捕獲されたことに怒っているのか、ずっと威嚇してうなっていたそうだ。そのうち部屋にあったキャットタワーの頂上まで登って降りてこなくなった。

「ただ、フードには執着心が強く、ウーっとうなりながらひたすら食べていました。なんとかなれてもらおうと必死で話しかけていたのですが、一週間くらい経つと突然キャットタワーから降りてきて、スリスリしたんです」。その日を境に黒猫は、一気に甘えん坊になった。

一番の甘えん坊

3匹の先住猫は、大きな体格のクーちゃんを嫌がった。クーちゃんは、まったく意に介することなく、ひょうひょうとしていた。しかし、先住猫がとにかく嫌ったので不穏なムードが漂っていたが、いまでは同じ部屋にいられるようになったという。

皮膚の疥癬は注射をしてもらうとだんだん良くなったが、猫風邪は慢性的で、いまでも鼻水が出ているそうだ。フードを食べる時、うつむくと涙が出る。

クーちゃんは、知華さんの顔を見るだけで喉をゴロゴロ鳴らして喜ぶ。「クーちゃん」と名前を呼ぶと、どこにいても駆け寄ってくる。眠っている時も話しかけると「ニャニャニャ」と鳴くいじらしいところもある。他の子をかまっているとやきもちを妬く、知華家の猫の中で一番の甘えん坊だという。

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