人なれしていない怖がりの猫…飼い主が体調を崩した日を境に、そばにいてくれるように

渡辺 陽 渡辺 陽

幼い頃から飼っていた愛犬を失い失意の底にあった堂前さん。仕事をしているので、犬ではなく猫を飼うことにした。留守番のできる大人猫を探していたが、譲渡会で人なれしていない怖がりの猫に出会った。

愛犬を失ったショックから立ち直るために

ぽてくんは、保護団体が保健所から引き出した猫だった。譲渡会で、今の飼い主の堂前さんと出会った。

千葉県に住む堂前さんは、2016年2月、15年間大切に飼ってきた犬を亡くした。子供の頃からずっと一緒にいたのでショックだった。

「ペットロスではないのですがやる気が起きず、毎日一緒に寝ていたので眠れなくなりました。そんな時、知人が猫を飼ってみたらと言ってくれたんです」

「犬は散歩があるから、仕事をしていると大変、猫なら飼える」と思った堂前さんは、譲渡会に行ってみることにした。

人なれしていない怖がりの猫

2016年5月のゴールデンウイーク、譲渡会場に行くと、ケージの中にいろんな猫がいた。ただ、張り紙に写真と名前が掲載されているのだが、姿の見えない猫がいた。その猫は、人見知りが激しく怖がりだったので、あまり人目につかない奥のほうにいたのだった。

堂前さんは、その猫のことが何か気になった。スタッフは、「この子には触れません。ちょっとのぞくだけならいいですよ」と言った。

「自分の力で心を開いてもらいたいと思いました。1歳半くらいだったのですが、仕事をしていますし、猫を飼ったことがないので子猫ではなく大人猫がよかったんです」

初めて心を開いてくれた時

すぐに2週間のトライアルがスタートした。名前はぽてくんにした。

ぽてくんは、ずっとケージの中の同じ場所にしゃがんでいて、キャットフードもあまり食べなかった。ケージの隙間から猫じゃらしを入れると、シャーシャー威嚇してきた。

「人なれしていないと聞いていたので、まずは安全な場所だと分かってもらえたらいいと思いました。それでも、話かけたら愛情が伝わるかもしれないと思い、毎日話しかけました」

最初はちょっとでも近づくと慌てて逃げていったが、1カ月もするとお尻のほうはなでられるようになった。

2016年の年末、堂前さんが体調を崩して横になっていると、ベッドの上に上がってきた。それが初めて心を開いてくれたと感じられた時だった。それ以来、いつの間にかベッドで寝ていたら、自分から枕元に来てゴロゴロ喉を鳴らすようになり、堂前さんは感動したという。

のちに堂前さんは3匹の猫を飼ったのだが、他の猫が堂前さんに甘えると、「あっちに行って!」と怒り、やきもちを焼くそうだ。

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