「自由な暮らしより、家のほうが幸せかも」…地域で可愛がられていた野良猫2匹、ハクビシンに襲われ引き取り決意

渡辺 陽 渡辺 陽

 東京都の住宅地で暮らす2匹の野良猫がいた。いつも2匹一緒にいて、ボランティアの人にも可愛がられていた。ただ、どれだけ可愛がられても野良猫は野良猫だ。ある日、男の子の猫がハクビシンに襲われ、ケガをしてしまった。2匹のことを見守っていたAさん夫妻は、飼ったほうがいいのかどうなのか逡巡した。

2匹一緒に飼ってもらえませんか

2017年11月、東京都に住むAさんは、近所の戸建ての前に佇んでいる2匹の猫を初めて見た。その後も見かけたが、いつもその家の前にいるので、飼い猫だと思っていたという。

「可愛いなと思って、よく写真を撮っていたんです。後に、近隣の人に聞いて野良猫だと知りました」

ごはんをあげている人もいたが、みんなペットを飼っていたので飼えなかった。

Aさんは、いつも夜の10時くらいに帰宅するのだが、ボランティアの人も同じ時間帯にごはんをあげに来ていたので、顔を合わせることがあった。2019年、ゴールデンウィークが始まる前に、「猫を飼ってくれないか」と言われた。AさんとAさんの夫が夫婦だと知らず、最初は別々に声をかけられたが、「夫婦ならなおさら2匹一緒に飼ってくれないか」と頼まれた。

地域には他にも野良猫がいたが、2匹は異母兄妹。いつも一緒にくっついていいて、人懐っこかった。

男の子は、やや白っぽい色をしていたので白(シロ)くん、女の子は右手が白かったので、右ちゃんと呼ばれていた。

飼うほうが幸せなのか、飼わないほうがいいのか

白くんと右ちゃんを可愛がってきたAさんは、本当に飼えるかどうか考えた。

「共働きなので寂しいんじゃないかとか、いままで自由に暮らしていたのに、いきなり家の中に入れたらかわいそうじゃないかとか考えて、最初は断りました。でも、右が雨に濡れ鳴いて甘えて来た時は、家に入れたほうが幸せかもしれないと思ったのです」

そうこうしているうちに白くんがハクビシンに尻尾をかじられて怪我をした。ハクビシンは、猫のごはんを狙いに来たようだった。

「また襲われるかもしれないし、交通事故に遭う危険性もある。2匹仲良しだったので、一緒に飼う決心をしました。猫を飼いたくて飼ったというより、白と右のことが大好きだったんです。ボランティアさんには、2歳の野良猫を引き取る人は珍しいと言われましたが、たとえ5歳でも6歳でも気持ちは変わらなかったと思います」

猫との暮らしが楽しくて

2匹を捕獲する時は、ボランティアの人や2匹が居ついていた戸建ての家の人が総出で協力してくれた。しばらくごはんを与えないで捕獲機を設置すると、白くんはすんなり捕獲機に入った。その様子を見ていた右ちゃんは、捕獲機を見ただけで逃げたが、ごはんを与えずに捕獲機を設置して、なんとか捕まえることができた。ボランティアの人は、猫を飼ったことがないAさん夫妻のために、ワクチン接種に連れて行ってくれたり、猫の飼い方を教えたりしてくれた。

白くんは、おっとりしていて甘えん坊。掃除機をかけても自分の毛が吸いこまれるまで動かない。吸われ始めてやっとのろのろ移動する。右ちゃんは繊細で臆病。白くんと違い、掃除機を出しただけで高いところに駆け上がっていくという。

「主人より先に帰ると白と右が尻尾を立てて玄関まで迎えに来て、ニャアニャア鳴いて甘えてくれるので嬉しいんです。後から帰ると知らん顔なので。あまり好きじゃないごはんをあげると『えっ!』という顔をするなど、ひとつひとつの行動が可愛いいんです」

Aさんは、猫との暮らしを楽しんでいる。

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