「ラジオから謎の悲鳴」「濃霧の中、突如白バイが現れて」…トラックドライバーたちの怪談漫画にゾクゾクッ!

川上 隆宏 川上 隆宏

トラックドライバーたちの間で密かに語られている「怖い話」をまとめた漫画が、Twitterで話題になっています。毎日何百キロもの長距離を走るドライバーたちは、面白エピソードの宝庫。背筋が寒くなるような心霊現象から、大惨事につながりかねない事件まで…多彩な「怪談」がネットの人たちの心をとらえています。

描いているのは九州在住で、トラックドライバーをしながら漫画ライターとして活動している、ぞうむし(@zoumushi6)さん(47)です。「トラックドライバーの怪談」という作品をWebメディア「オモコロ」に掲載し、Twitterでも公開しています。

物流センターの控え室で、同僚たちから聞いた話をふまえて描かれているといい、作品にはリアルな怖さと不思議さがあふれています。ラジオが入らない場所で何やら痛がる悲鳴を拾ってしまったり、強い雨の中で見かけた女性が消えてしまったり…。

あるドライバーが語るのは22年前の思い出です。通行止めで高速を降りたところ、濃霧の峠を通る羽目に。センターラインも見えないくらいになり、運転できずハザードを出して止まっていたところ、突如現れた白バイが誘導してくれたといいます。その後白バイは消えてしまいますが、来た道を振り返ると、がけ崩れした場所を避けて走っていたことに気が付きます。ドライバーは語ります。「この世のひとじゃなかったかもだけど あの隊員さんには感謝してるよ」

そんなエピソードに、Twitterのリプライ欄には「怖い」という声もありながら、「死んでも警官としての職務を全うする良い方だったんですね」「生者を生かそうとしてくれる霊の話が大好き」といった声が寄せられています。また、「父もトラック野郎でしたが、同僚さんたちからこの手の話はよく聞いたそう。高速で事故が多い場所ではよく見かけるとか」と、身近な体験を紹介する人もいました。

ぞうむしさんに聞きました。

――物流センターに集まるドライバーたちの面白い雑談を漫画にしようとしたのはなぜですか。特に「怪談」を紹介しようとしたのも気になります。

「トラックドライバー歴は約25年になります。ドライバーの漫画を描くにあたって、編集者の方と絵コンテをやり取りしてるうちに『ヒヤリハット』(業務中に思わずヒヤっとしたことやハッとしたことなどの総称)をテーマにしたらどうか、というアイデアが出て、そこから怪談に発展しました。物流センターの詰め所(控え室)で雑談しているドライバーのおっちゃんたちの話が面白くて、いつも盗み聞きしていたのが良い経験になりました」

――ドライバーのみなさんが、見た目はちょっとコワモテなのに、道で出会った人のことを心配したり、「この世のひとじゃない」存在に素直に感謝していたり…。全体的にやさしい雰囲気に描かれている印象を受けました。

「自分がトラックの世界に飛び込んだ時は、まだ見た目も性格も怖い人が多かった気がしますが、今のドライバーはかなりソフトになった印象です。見た目は昔のドライバーのイメージで描いていますが、不器用だけど世話焼きでやさしい人が多く、仕事で助けてもらうこともよくあるので、実体験を反映した描写になっていると思います」

――あと、漫画の中で、ドライバーのみなさんの会話を「スマホでメモっている」とされていますが、怪しまれたりしませんか。そもそも漫画を描かれていることはみなさんご存知なんでしょうか…。

「スマホは『ただ、いじってる』ようにしか見えないと思います(笑)。人から面白い話を聞き出すコツというようなものはありませんが、自分がオカルト好きのせいか、自然と集まってくる感じです。職場には漫画を描いていることは最近まで言っていませんでした。昨年(2019年)に、自分が30年間憧れ続けている漫画家の先生に取材出来る機会が急きょ決定し、上司に『来週東京に行くので休ませてください!』と直訴した際に、理由を尋ねられてバレました…」

 ――ドライバーをされながら漫画を描く時間を捻出するのは大変ではありませんか。

「自分は地場(九州管内)を配送しています。いわゆる宅配のようなものではなく、工場などに納品しています。だいたい自社を出発して午前中から午後まで配送し、夕方からは荷主の工場へ出向いて明日配送する分の製品を積み込む『夕積み』という作業をして、自社に戻る…という流れですね。1日160キロくらいは走ります」
「仕事がある日は、4時50分に起床して出社。5時45分〜17時30分までが配送業務。その後、帰宅して家事や育児をして、漫画製作などは就寝までの2時間をあてている感じです。漫画の製作は『20マイル行進』という方式で行っています」

――えっ、調子が良い時も悪い時も一貫したペースを守ったほうが、結果を出せるという方法論ですよね。

「50分作業をしたあと10分休憩、これを2セット行うかたちで、キッチンタイマーを2個使用して時間を厳守しています。メンタルの状態に影響されやすいので、気持ちが乗るまでに時間がかかることもありますが…。また、漫画製作にあたっては、一緒に活動しているデザインチームの2人が仕上げなどを手伝ってくれています」

――Twitterなどで大変漫画が話題になっていますが、みなさんのコメントを見られて感想があればお聞きしたいです。

「たくさんの方から感想をいただけて、本当に有り難いです。描いた甲斐がありました! なかでも同業者やホラー、漫画好きな方たちからの『リアルだ』『怖い』『面白かった』という感想には胸が弾みました。次も楽しんでもらえるものを描こうと身が引き締まりました」

   ◇   ◇

 Webメディア「オモコロ」には、こちらで紹介しているエピソード以外にも、ぞうむしさんの作品がたくさん掲載されています。現在の活動に至るまでの経緯などを描いた「43歳、漫画星。」という作品もありますよ。ぜひチェックしてください!

■オモコロ「ぞうむしが書いた記事」 https://omocoro.jp/staff/zoumushi/

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