えっ!ここって渋谷じゃないの?あのスクランブル交差点に”激似”の施設が足利市に再現された理由

山本 智行 山本 智行

 まるで東京・渋谷のスクランブル交差点を思わせるオープンセットを利用した「足利スクランブルシティスタジオ」が栃木県足利市に誕生して話題を呼んでいる。都内の映像美術会社が廃止された足利競馬場の跡地を利用し昨年9月、リアルに再現。実際、映画やドラマの撮影に使われ、その後、解体予定だったが、存続が決まった。その背景にあったものとは。

 映画撮影用のオープンセット「足利スクランブルシティスタジオ」は2003年に廃止された足利競馬場の跡地に建設された。敷地の一部には足利赤十字病院が移転し、付近は野球場やビーチバレーのコートが広がる運動公園として整備されている。

 セットの広さは約6600平方メートル。大勢の人が行き交う日本一有名なあの繁華街のスクランブル交差点がほぼ実寸大で再現されている。しかも地下街への階段や駅前交番はもちろんのこと、改札、道路標識、道路の傷や落書きにいたるまで細部にもこだわっており、周囲のビルをCGで再現するためのグリーンバックの壁も設置する念の入れようだ。

 スタジオを運営する「栃木スタジオシティプランニング」によると、もともと中国映画の製作にあたり、渋谷のスクランブル交差点で撮影する話が持ち上がった際、交通量の多さや警備上の問題などから断念。そこでセットを作ることになり、昨年9月に完成し、映画など3本の撮影に使用されたという。広報担当は「交通量が多く、撮影が困難なスクランブル交差点の描写が手軽にできることにより、わたしたちの想像を超える作品が多く生まれることを期待している」と話す。

 その中のひとつが東映配給で12月4日に公開予定の映画「サイレント・トーキョー」だ。ネタバレにならない程度に内容に少し触れると、1年に一度、誰もが幸せな気分に包まれるクリスマス・イヴ。きらめく東京を突如として連続爆破テロが襲うというサスペンス・エンターテインメントに仕上がっており、佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊ら豪華キャストが集結している。

 その後、セットは年内に解体の予定だったが、足利市と映像会社の思いが一致して存続が実現。コロナ禍の影響を受けながらも今年の6月30日から運用を開始し、問い合わせも多数舞い込んでいる。

 そもそも足利市が撮影に携わるようになったのは2013年から。和泉聡市長が地域活性化の核として「映像のまち」構想を推進し、新たな部署を設置した。それ以降、映画「バンクーバーの朝日」、ドラマ「水球ヤンキース」など映画やドラマを中心に300本以上の撮影誘致に成功している。今回もその一環で、交差点セットの構想が浮上すると、積極的にアピールして、建設地に選ばれたいきさつがある。

 映像のまち推進課の安西健課長は「構想が掲げられて7年目。今回をきっかけに、市全体での撮影がさらに活発になれば」と意気込んでいる。もしかすると、足利が“日本のハリウッド”になるかもしれない。

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