このソフトクリームの写真…何かすごくありませんか!? 燃え上がる炎のような突起があしらわれたデコラティブな容器が気になりますが、実はこちら…縄文時代の「火焔土器」のデザインを再現したものだそうです。はるか昔の造形美と「夏の涼」との時空を超えたランデブーが、SNS的に「映える」とネットの人たちを驚かせています。
話題の写真を投稿したのは、大阪市在住のNぼっくす+(@cTstZKtDOlRIN1z)さんです。「火焔土器型ソフトクリーム容器」と、持ち手の部分に土偶がデザインされた「ミス馬高(うまたか)土偶スプーン」と名付けた作品を17日に紹介したところ、19日夜までに4.5万件の「いいね」がついています。
火焔型の土器は、1936年に新潟県長岡市の馬高遺跡で初めて出土。その後、各地で似たような特徴を持つ土器が発見され、縄文時代中期を代表する土器といわれています。存在感ある力強い造形をアイスの器に使うというアイデアの奇抜さに、ネットでは「天才」「この発想はなかった」「クリームが神々しく見える」との声が寄せられています。また、容器の色や質感が、食べられるコーンにそっくりなこともあり、「食べてみたい」「古代好きとしてはぜひ商品化してほしい」との声もありました。
投稿したNぼっくす+さんに聞きました。
――どうしてこんなものを作ろうと思われたのですか。
「猛暑が続いている中、アイスクリームを食べる機会が多くあり、その中で(縄文土器をアイスクリームの容器に使うという)アイデアが思い浮かびました。もともとは自分で設計して作成しようと、インターネットで資料を捜していたところ、『火焔土器』と『ミス馬高土偶』の3Dデータがオープンソース(無償で誰でも使るように公開されている状態)で存在していることを知り、活用させていただきました」
――公開されているデータを使って作られたのですね。
「かなり詳細なデータが公開されておりましたので、データのダウンロード後は、3DのCADでサイズ調整と(土偶の)スプーンの部分だけを付けたし、3Dプリンターで出力しました。CAD作業自体は5分ぐらいで、プリンターによる出力は15時間ほどかかりました」
――CADの作業はそんなに短かったのに、出力に15時間!…大変でしたね。
「撮影に際しては、本物のアイスを乗せるのが一番難しかったです(笑)。形が崩れないように注意しながら、コンビニエンスストアで購入したアイスのコーンの部分だけを下から食べるのに苦労しました。もたもたすると溶けてしまうので(笑)」
――容器が今すぐ食べられそうな質感です。本当にこんなカップが販売されていそうですよね。
「材質は本物のコーンに質感が似るように木粉入りのPLAフィラメント(3Dプリンターで使う樹脂材料)を使用しています。ですので、実際に食べることは出来ないです」
―こんな容器だと、ソフトクリームが神々しく見えてくる、という声もSNSにはありました。
「撮影場所にもこだわり、『縄文感』を演出したかったので、実家の田んぼの前で撮影しています。食べる場所や器によって料理の味わいが変わってくることは実際にあると思いますので、縄文時代に想いをはせていただけたらと思います。ちなみに、撮影に使用したアイスはおいしく頂きました」
―話題になったことについてどう思われますか。
「多くの方に共感いただきうれしく思います。2次製作を通してそれらの文化が広まっていくこと、デザインの歴史が継承されていくことはとてもすばらしいことだと思います。このような活動がもっと広がっていったらいいなと考えています。機能的な弥生土器に比べ、縄文土器は見栄えやデザイン、いわゆる『映え』を意識して作られたものだと思いますので、当時の制作者の狙いどおり(?)に皆で盛り上がれたことが面白いなと思います」
◇ ◇
Nぼっくす+さんが活用した土器と土偶の3Dデータは、長岡市に事務局が置かれている、縄文文化を広く世界に発信するための組織「縄文文化発信サポーターズ」が、「縄文オープンソースプロジェクト」というサイトで紹介しています。2018年12月に「火焔土器」、2019年8月に「ミス馬高土偶」の3Dデータを公開しました。
事務局によると、公開データを使った作品などはよくSNSなどに投稿されているそうですが、「火焔土器のデータをソフトクリームの器に使ったというケースは初めて聞いた」とのことでした。
▼縄文オープンソースプロジェクト
https://jomon-supporters.jp/open-source/
◇ ◇
普段はメーカーに勤め、玩具等のデザイン・設計などに従事しているというNぼっくす+さん。3Dプリンターで、ほかにもいろいろなものを作っています。いくつかご紹介しますね!