SNSの世界で生まれた絆 ジャックラッセルテリアのぴのちゃんが、知らないおうちに2か月間の“ホームステイ”

岡部 充代 岡部 充代

 ぴのちゃんはジャックラッセルテリアの女の子。8月15日で3歳になりました。先代のChocoちゃんを17歳で亡くした浜田家に迎えられ、「チョコに包まれたピノ」(アイスクリーム)というのが名前の由来です。

 ぴのちゃんに“一大事”が起きたのは昨年9月半ばのこと。お母さんの典子さんが腰を圧迫骨折してしまったのです。最初はぎっくり腰だと軽く見ていましたが、立てなくなって救急車で運ばれることに。

 当時の浜田さんには楽しみにしているイベントがありました。犬猫写真専用の投稿アプリ『ドコノコ』でつながっているジャックラッセルテリアの“オフ会”が、11月に京都で開催されることになっていたのです。埼玉県在住の浜田さんも参加予定でしたが、「11月に京都へ行きたいのですが…」と医師に告げると、「無理です!」と即答されたそうです。

 

 それでもコルセットをして安静にしていれば2~3か月で治ると言われていましたが、1か月半後には数メートル先のトイレに行くのもつらいほど悪化。10月末に手術することになりました。

 ここで困るのがぴのちゃんのことです。ご主人には仕事がありますし、娘さんたちも共働き。その時点ですでにぴのちゃんは動物病院のホテルに1週間ほど預けられていて、浜田さんとしてはさらなる長期化は避けたいところでした。

「ぴのも慣れている場所でしたが、診察中は基本ケージの中ですし、お散歩には連れて行ってもらえてもやっぱりストレスはたまる。夜間は人がいなくなりますし、どこか預かってもらえる場所はないかと探したんですけど、なかなかなくて…」(浜田さん)

 

 困り果てた浜田さんは、オフ会の幹事役で旧知の間柄だった女性に相談。すると「よし子さんが預かってくれるよ!」という連絡が来ました。よし子さんとは千葉県に住む雨谷よし子さん。やはりドコノコでつながっているジャックラッセル仲間で、京都のオフ会で会うのを楽しみにしていた一人です。雨谷さんは浜田さんの窮地を知り、ぴのちゃんの預かりを申し出たのでした。

「私は専業主婦だからお留守番させなくていいし、“ペット共生住宅”なので多少騒いでも大丈夫だろうと。ワンちゃんを預かるのは初めてでしたが、主人もいいと言ってくれました」(雨谷さん)

 雨谷家の13歳になるパムちゃんはマイペースで“犬見知り”な性格。傷つけることはないだろうと、2匹の相性が不安材料になることはなかったそうです。

 とはいえ、SNSだけのつながりで、面識のないご家族の愛犬を預かることに抵抗はなかったのでしょうか。

「それは不思議となかったですね。ドコノコを見ていると、どの子も愛されていることが分かります。そういうおうちの子なら大丈夫だと思えました」(雨谷さん)

 

 こうして、ぴのちゃんは雨谷家のお世話になることに。雨谷さんはドコノコの中に『ぴののホームステイ』というブックを作り、日々の写真を投稿しました。浜田さんに安心して静養してもらうためです。

 ホームステイは実に69日にも及びました。パムちゃんとはすぐに打ち解け、雨谷さんご夫妻にも懐いていましたが、途中、血尿が出てストルバイト(尿結石の一種)が見つかるというアクシデントも!幸い、大事には至りませんでしたが、このとき浜田さんは術後2日目。「お任せするしかありませんでした」と申し訳なさそうに振り返ります。でも、これが雨谷さんにとってはありがたいことだったとか。

「任せてもらえて逆によかったです。いつもと違う病院に行かなければいけないし、先生によって治療方針も違う。その部分が気になるようであれば、私もどうすればいいか困惑したと思います」(雨谷さん)

 もともと多頭飼いに憧れていたという雨谷さんは、ぴのちゃんを預かったことで「夢がかなった」と言います。若犬と2か月も一緒に暮らしたパムちゃんは元気になったそうですし、ホームステイ期間中に他のドコノコ仲間が遊びに来てくれるという、うれしい出来事もありました。雨谷さんは今、「あの頃が無性に懐かしい」と感じています。

 

 SNSだけの関係性は、一歩間違えばトラブルに発展する可能性もあります。でも、ぴのちゃんのホームステイのように心温まる“絆”が生まれることも。「困ったときはお互い様」の精神がSNS上のバーチャルなご近所さんの間にもあって、もしものときに助け合える選択肢の1つになるのなら、こんなに素敵なことはありません。

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