「距離は遠く、想いは近く」…映画館での新しい舞台挨拶のカタチ

宮本 裕也 宮本 裕也

映画館の貴重な収入源でもある舞台挨拶。新型コロナウィルスにより、夢の時間に変化が起きている。

そんな中、オンラインを使った舞台挨拶が注目を集める。大阪・阪急十三駅近くにある映画館、第七藝術劇場(以下ナナゲイ)とシアターセブンで番組編成を担う劇場スタッフ、小坂誠さんに話を伺った。

生き残るために

「シアターセブンはイベント運営などで経営していたのでコロナ後は他のイベント会場と同じくダメージを受けたので何とかしないとと思いましたね。ぶっちゃけ経営は今も厳しいですよ」。

その打開策としてオンラインによるイベントが生まれた。

「コロナ後、オンラインでのイベントはゲストの幅は広がりました」。シアターセブンでオンラインイベントを重ね、ナナゲイでも関係者らによるリモート舞台挨拶が始まったという。これはイケると思ったのは映画『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督/2018年)の舞台挨拶だったという。

コロナが生んだリモート舞台挨拶

「白石監督、脚本の井上淳一さん、さらに主演の井浦新さん、門脇麦さんらがオンラインでのリモート舞台挨拶を行いました。この豪華ゲストを劇場に呼ぶとなると今までは交通費など経費の問題でほぼ実現不可でしたが、これが実現したのもリモートならではですね」と振り返る。

リモート舞台挨拶は、ゲストとお客様の反応も違うという。「ゲストによってはお客さんからどんな質問があるのか緊張感を持って話す人もいる。オンラインは面と向かってのやり取りじゃないので、映画に納得のいかないお客さんから怒って拳は飛んでくることもないので」と笑う小坂さん。

「企画会議では『どんなゲストを呼ぶか』という話になります。以前は経費がかかるのでできるだけ関西圏の方にお声がけしてました。でもオンラインだと、国境を超えてゲストを呼べることに気づいたんです」

会議後、7月に上映された韓国映画『はちどり』の公開記念に海外に住むキム・ボラ監督に出演してもらったという。「ダメ元で、オンラインだからできないですかってお願いしたんです」。小坂さんの予想に反し企画は採用。イベント当日は満席。お客様と監督との熱のこもったやりとりが繰り出されたそうだ。小坂さんは語る、「海外の映画祭のような時間でした。世界の映画祭自体はリモートでのやりとりが頻繁にありますが、まさか自分のいる映画館でできるとは… 」。そして是枝裕和監督らによるリモート舞台挨拶も開催したそうだ。

「コロナによって、映画関係者も劇場を応援したいという想いが伝わってくる。今後はオンラインの良さを活かし、海外の映画監督にもたくさん出演してもらいたい」と語った。

同館は1930年の名作『何が彼女をそうさせたか』の活弁付き上映会をオンラインで行うなど映画館の強みとオンラインの良さを組み合わせて映画の新たな可能性を届けている。

ソーシャルディスタンスを守りつつ、映画館とお客さんをつなぐため、小坂さんの闘いは続く。

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