ご存知ですか?「給与ファクタリング」…給与担保に高額手数料で貸付 コロナ不況に付け入る新手のヤミ金

多田 文明 多田 文明

 新型のコロナの影響で、多くの企業が倒産しています。感染者が増え続けている現状では、さらなる景気の低迷が懸念されています。この状況のなか、気をつけたいものに、「貸します詐欺」があります。

 6月に青森で会社を経営する50代男性のもとに、低金利でお金を貸してくれるというファックスが届きました。そして500万円の融資を申し込むと、手数料や担保金が必要だと繰り返し言われて、400万円を超えるお金をだまし取られました。新潟でも店舗経営の男性にファックスが届き、新型コロナの影響による経営の先行き不安から、業者に借金を申し込み、保証金などの名目で390万円をだまし取られています。

 融資をする前に保証金、手続き費用、借入金データの抹消費用など様々な理由をつけてお金を要求することから、融資保証金詐欺といわれ、特殊詐欺のひとつになっています。

 しかしながら、コロナ不況のなかで、お金に困っているのは、経営者だけではありません。個人でもお金に困っている人たちがたくさんいます。SNS上には、個人で融資をしてくれるという書き込みをたくさん見かけますが、当然、こうした中には、融資保証詐欺につながるものもあります。

 昨年のことですが、SNSで「お困りの人に、お金を貸します」と書き込んでいた19歳の少女が逮捕されています。少女はお金を借りたい人に、貸し出すお金の1割を前金として払うように促して、金をだまし取っていました。この手口で100人を超える人が被害に遭い、中には小学生もいたそうです。実際、融資保証金詐欺では、借りたい金額の1割ほどを保証金にするケースは多くありますが、なぜ少女はこの手口に精通していたのでしょうか。それは、彼女自身が過去にこの詐欺でだまされた経験があったからだそうです。「やられたら、やりかえす」という手法で多くの人をだましていたのです。正義にもとる方法での“倍返し”には困ったものです。

 これ以外にも、個人間の融資といいながら、SNS上には、貸金業法の登録を受けず、利息制限法を超える高金利で貸し付けるヤミ金業者も潜んでいます。もし一度でも借りてしまうと、延々に返済が続くことになってしまいます。

 こうした中で、給与ファクタリングという、新たな手口も出てきています。まず金融機関ではお金が借りられない人を狙って、「ブラックでも大丈夫」「保証人は不要です」という宣伝文句で借りたい人を募ります。そして、業者が毎月の給与を債権として買い取ることを条件にして、お金を貸します。その時、手数料分を引いたお金を利用者に渡すわけですが、この時の手数料が極めて高額なのです。

 国民生活センターには、20代男性が職を失い、借金の返済が苦しくなり、ネット上で簡単に融資を受けられる給与ファクタリング業者を見つけて、連絡しました。給料の債権を譲渡するシステムと説明されて、5万円の借金を申し込むと、2万円の手数料が引かれた3万円が振り込まれました。次の給料日には5万円を返済しなりませんが、手数料が高くて返済できないという相談が寄せられています。しかも、男性は業者に家族の携帯番号を教えてしまったので、執拗な取り立てが家族にいくようになったといいます。

 この他にも、20代男性が5万7000円分の申し込みをしたら、2万円の手数料を差し引いた3万7000円が入金されました。しかし返済できず「少し猶予して欲しい」と業者に頼むと「親の所へ回収に行くぞ」と強引な取り立てを受けています。申し込む際、自らの給料明細書の写真をメールで送るだけでなく、勤務先や家族の連絡先も伝えているので、このような事態になってしまいます。

 また、40代男性が子どもの治療費が必要になり、業者に申し込み、7万円を手渡しで受け取りました。次の給料日に12万円を銀行振込で返済する形になったのですが、年利が700%以上になるので違法ではないかという相談もあります。業者はこれに対して「給料を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。金利ではなく手数料だ」と言っているそうです。

 このように、給与ファクタリング業者は、給与債権を買い取る形なので、貸付には当たらないので、借金による利息ではなく、あくまでも手数料だと主張してきます。しかし実質的には、法定金利をはるかに超える利息を払うことと同じことです。すでに、給与ファクタリングを行っていた業者が、貸金業法違反の疑いで逮捕されています。

 新型コロナウイルスの影響で収入が減り、生活費を必要として、ネットで借金する先を探している人も多いかもしれません。そこには貸します詐欺以外にも、ヤミ金業者もおり、様々な方法で私たちをだまそうとしてきます。くれぐれも簡単にお金が借りられる言葉に釣られず、もし借りてしまいトラブルに遭った時には「188」に電話をして、最寄りの消費者センターに相談するようにしてください。

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