小売店のレジ袋について調べていたときのこと。レジ袋メーカーの担当者に「スーパーのビニール袋のことで」と切り出したところ、「今はビニール袋とは呼ばないんですよ。正確にはポリ袋です」。さらに申し訳なさそうな声で「昔の呼び方ですね」。生まれてこのかた、レジで渡される取っ手の付いた袋も、ロール式透明袋も、全部ひっくるめてビニール袋と呼んでいました。日常会話でもしょっちゅう聞く印象ですし、通じなかったためしはありません。なのに、なぜ…!
呼び方混在
アラフィフ世代の同僚に薬局のレジ袋を見せ、何と呼ぶか質問すると「ビニール袋やろ」。同士よ、やはりそう呼んじゃいますよね。次に、ツイッターの検索窓に「ビニール袋」と入力すると「ビニール袋 売り切れ」「ビニール袋 有料」と検索候補が出ました。SNS上でもレジ袋やポリ袋と同義語として使われているようです。
メーカーに聞いた
ビニール袋と呼ぶのに、ビニールではないーー。混乱したまま調べていくと、こんなページに行き着きました。ポリ袋やゴミ袋の開発、製造、販売を行う「日本サニパック」(東京都渋谷区)のQ&Aページ「ポリ袋とビニール袋の違いってなに?」です。
<現在ではゴミ袋や食品保存袋、レジ袋にビニール製のものはなく、すべてポリエチレン製です。したがって、「ビニール袋」ではなく「ポリ袋」と呼ぶのが正しいです>
さっそく、同社の品質管理本部担当者に話を聞きました。
ー基本的なことを教えてください。
「ポリ袋は、ポリエチレンやポリプロピレンから造られた袋です。 一般的に、ゴミ袋やレジ袋、食品保存袋はポリエチレン製です」
ーポリエチレンとは?
「ポリエチレンは、大別すると2種類あります。 1つは低密度ポリエチレンで、柔らかく伸びる性質です。もう1つは、高密度ポリエチレンで、レジ袋やスーパーマーケットのサッカー台に設置されているロール袋等で、シャリシャリした性質です」
ーポリプロピレンは?
「ポリプロピレンは、透明性に優れた硬い性質で、一般的には包装資材として使用される場合が多いです。 ポリエチレンもポリプロピレンも比較的コストが安く加工し易いため、消耗品には好都合な素材だと言えます。神戸市指定袋の可燃用も高密度ポリエチレンだったと思います」
神戸市指定ごみ袋の規格を調べると、燃えるごみは高密度ポリエチレン、燃えないごみや缶・びん用などは低密度ポリエチレンでした。
ビニール製はプールバッグ
ービニール袋について教えてください。
「塩化ビニール(PVC)で造られた袋です。 一般的に塩化ビニール製品は、家庭用プールや浮き輪、テーブルクロスに用いられる比較的厚手の柔らかい性質です。現状ではゴミ袋やレジ袋に使用されることはありません」
ー他にはどのような物に使われていますか?
「袋ですと、ご婦人方が使用される持ち手の付いたファッションバッグや、お子様がプールや海水浴に行かれる際に水着などを入れる厚手の透明でカラフルなプリントがさている袋がビニール製です」
呼び名混在、理由判明
では、なぜ世の中にはビニール袋という呼び名が浸透し、混在しているのでしょうか。前出のQ&Aページに次のような説明がありました。
<初めに大量に市場に登場したのがポリ塩化ビニル樹脂であったため、後にポリエチレンで造られたポリ袋に対しても、形状が似ていることから、そのままビニール袋と呼ぶようになりました>
ー歴史的にビニールの袋が先に登場し、その後、素材が変わっても呼び名だけが残ったということですね。
「ポリ袋が世の中に普及する以前から、ビニール製の袋や製品は存在しています。 一般の方はそれらの区別がつかないことから、総称してビニール袋と呼ぶ場合が多いと思われます。私どもの業界では、各社がホームページなどでポリ袋とビニール袋の違いなどを説明しています。できれば『ポリ袋』と正しい言い方が普及することを願っています」(品質管理本部担当者)