イベント中止で彷徨う“自由研究難民”を救う?ただの箱の中はまるでラビリンス…万華鏡の美し過ぎる世界

広畑 千春 広畑 千春

 長かった梅雨もようやく明ける気配、そして迎えた夏本番。お子さんが夏休みに入っているご家庭も多いのでは。コロナ禍で大幅に短縮されたのに、宿題リストにはしっかりと“ラスボス”「自由研究」が記されていて…。なのに頼みの綱の工作・科学イベントも続々中止!!と途方に暮れる親子の救世主になりそうな、なんとも美しい工作動画が話題を呼んでいます。

 投稿したのは、佐賀県立宇宙科学館の公式ツイッター。1974年に女子美術大学名誉教授で造形作家のヤマザキミノリさんが考案した立方体の「立体万華鏡」から見えた光景を「この箱を覗いたとは思えないほど綺麗ですごいものが撮れました」と投稿したところ、これまでに21.2万いいねが寄せられ、動画は254万回再生。「エッシャーの絵画みたい」「分子構造みたい」「箱の中を見て宇宙の不思議を解き明かす人がいるかも」など絶賛されています。

 制作した2年目の若手職員、北田大樹さん(24)に聞きました。

―なぜ動画を?

「当館では毎年夏休みに理科や工作のイベント『夏休み自由研究道場』を開いていて、10年近く続く人気企画なんです。でも今年はコロナの影響で、どうやっても密は避けられない―と断念することになり、せめてお家で楽しめるものを動画でお届けしよう、となったんです」

―でも、なぜ立体万華鏡だったんですか?

「これまで『道場』ではビー玉を使った万華鏡が人気だったので、その応用編を幾つか試してみよう、と最初に作ったのが立体万華鏡でした。でも作って覗いてみたら、ほんと驚くほどキレイで、『もうこれ1本で紹介した方が良くない?』と(笑)喜んで頂けて嬉しいです」

―でも、さぞかし複雑な工程なのでは…。

「いえいえ、6枚の鏡に傷を付けて組み立てるだけですから、所要時間は20~30分ぐらいです。加工する作業自体だともっと短いかも」

―えっ、そんなに?コツなどはありますか?

「そうですね。鏡は、アクリル板やガラスの裏面に銀色の膜を貼って作っていますが、この裏面にしっかりと傷を付けるのがポイントです。刃物でためらいがちですが、鏡自体を断ち切らない程度に、思い切ってしっかり傷を付けて下さい。細い傷よりも太めの線の方が、模様がキレイに出ます。できるだけ均一にする方がいいかと。普通のカッターよりもアクリル板などを切る『Pカッター』がオススメですね」

 と教えてくれました。しかも設計図等は特になく「行き当たりばったりで、どんな模様が出るかは全く想像できませんでした」といいます。

 そんな北田さんは佐賀県生まれ佐賀県育ち。幼稚園で針金を回すと紙人形が踊る仕掛け人形を制作し、小学1年でNHKEテレの人気番組で使われる『ピタゴラ装置』を自作するほどの工作や理科好きだったそうです。大学の工学部機械科在学中から、子どもの頃からの“庭”だった同館でアルバイトを始め、ピタゴラ装置ならぬ、巨大な「ビーコロ装置」などの展示物の制作に携わっているうち、「ここなら自分の好きなことやスキルを生かして働ける」と就職を決めたそうです。

 実はこの2週間前にも糸に通したビー玉15個が1分ごとに並ぶ「ペン手ラムウエーブ」の動画が話題になったばかり。まさかの展開に驚きつつ「自分の作ったもので人を喜ばせられるのは一番の喜び」と北田さん。

 子どもたちの目がキラキラと輝き、会場が一体になる対面イベントならではの醍醐味はないかもしれませんが、動画は全国、世界中の人がいつでも見られ、普段理科や工作に接しない大人たちもじんわりと癒やされる、そんな利点も。ウィズコロナの時代ならではの新しい楽しみ方なのかもしれませんね!

 佐賀県立宇宙科学館https://www.yumeginga.jp/

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