阪神の快進撃、サンテレビの悲鳴「ぴえん超えてぱおん」がきっかけ?

金井 かおる 金井 かおる

 神戸のテレビ局「サンテレビ」の番組表、通称「ラテ欄」が話題です。

 注目を集めているのは、7月11日のプロ野球中継番組「サンテレビボックス席」(午後6時から試合終了まで)。開局以来、阪神タイガース戦を中心に3300試合以上を生中継してきた、阪神ファンにとっては“神番組”です。当日のカードは、阪神対DeNA。球場名や解説者名のすぐ下で異彩を放つ呪文のような言葉が「タイガースが勝たなきゃぴえん超えてぱおん」。

 開幕ダッシュに失敗した阪神は黒星が先行し、当日はセ・リーグで最下位の位置にいました。そのタイミングで、突然“ぶっこまれた”若者言葉に、ネット上では<サンテレビのラテ欄草><サンテレビキュン>などとつぶやかれ、掲載した「神戸新聞」には読者から「意味を教えて」と電話で質問が寄せられました。これは作成したご本人に話を聞いてみるのが一番。過去に同番組のラテ欄を担当していたこともある、サンテレビ編成部の担当者に電話で話を聞きました。

「ぴえん」使った理由判明

 ー7月11日のラテ欄「ぴえん超えてぱおん」が話題です。

 「社内でも『何これ?!』と話題になりました」

 ーどなたが作ったのですか?

 「阪神戦中継のメインディレクターです」

 この日、「ぴえん超えて…」の作者はあいにく不在でしたが、担当者経由で「ぴえんー」に込めた思いを聞きました。

 「本人によると『負けが込んできた時期(7月初旬)に考えました。落ち込んだタイガースファンがクスッと笑ってくれたら』という思いを込めたそうです。あと…」

 ーあと?

 「『流行りの言葉を入れてみたくなった』とも言っていました(笑)」

 作者がラテ欄を作った時期は、「2020年上半期インスタ流行語大賞」の流行語部門が発表されたタイミングとも重なります。1位「ぴえん」、4位「ぴえん超えてぱおん」。作者の遊び心が感じられます。

サンテレビラテ欄トリビア

 「サンテレビボックス席」ラテ欄にちょっとだけ詳しくなりそうなトリビアを紹介します。

 同番組ラテ欄を作成するのは、前出の通りメインディレクターの仕事です。複数人がローテーション制でまわしています。

 メインディレクターは、自身の担当日には野球中継を行う「中継車」に乗り込み球場入り。生中継の方針や番組進行、カット割りなどを決める制作のリーダー的役割を担います。ラテ欄作成は膨大な責任ある仕事の中のひとつでした。

 原稿の締め切りは放送日の数日前。そのため、当日の試合風景に思いをはせ知恵を絞ります。

 当番制のため番組欄にもおのずと各人のカラーが出てくるようです。2日のラテ欄には「フンッ!バシッ!ストライク!うぇーい!さぁいこうぜ!フンッ!カキーン!うぇーい!ゴンッ!よっしゃ!ナイスバッティーング!」という何とも大胆な効果音がずらり。これは無観客試合で聞こえる音を表現したそうです。

 文字数にもルールがありました。雨天中止になる球場の場合(甲子園など)は、中止の場合の番組名も併記する必要があるため野球の紹介は短めに。天候に関係のないドーム球場の場合(ナゴヤドームなど)は、長めの原稿で。話題の11日は、甲子園球場だったため20文字の短めバージョン。2日の効果音は60文字でした。

ジンクスはあるの?

 編成部担当者にさらに話を聞きました。

 ーこの人がラテ欄を書いたら勝つ、というようなジンクスはありますか?

 「昨シーズンまでの話になりますが、メインディレクターは年間で1人15-20試合ほどを担当しますが、ワンシーズン中に1勝しかできなかった人もいます。このディレクターの時は必ず雨が降るとか、勝ちが多いとかはありますね」

 ー過去にも話題の名ラテ欄がいくつもあります。歴代のラテ欄職人たちに追いつけ追い越せとプレッシャーもあるのでは?

 「遊び心のあるラテ欄作成者が何人もいました。縦読みにチャレンジした人もいます。Tシャツとして商品化された“名作”もあります。これからもファンの期待に応えたい、楽しんでもらいたい、という気持ちです」

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