新型コロナウイルス感染拡大の影響で深刻な打撃を受けているブライダル業界から、少しでも明るい話題を発信しようと、神戸の老舗ウエディングサロン「いのうえ株式会社」(本社・神戸市長田区)が、日本に1台しかないという貴重な馬車「ファンタジーシンデレラ号」を購入した。ポーランドの名門馬車メーカーが手掛けたというまさにファンタスティックな逸品で、今後、結婚を控えたカップルなどが使う本社の撮影スタジオに常設。夢と愛があふれる写真を華麗に演出する。
同社は1949年創業。神戸や大阪、京都に拠点を置き、婚礼衣装の貸衣装業者として歩んできた。
ところがブライダル業界をコロナ禍が直撃。井上芳昌社長によると、3月以降は予定されていた結婚式がほぼキャンセルもしくは延期となり、損失は計2億数千万円に達しているという。7月現在も先行きは見通せておらず、依然厳しい状況が続いている。
それでも「こんなときこそ新しいことに挑戦だ」と井上社長は発奮。入籍を神社に報告する「結婚奉告祭」の取り組みを始めたり、衣装の倉庫と配送センターとして使っていた本社1階を改装して撮影スタジオ「スタジオ神戸」として生まれ変わらせたりするなど、新規事業を積極的に展開してきた。馬車の購入もその一環で、ディズニー映画「シンデレラ」やロンドン五輪などにも車両提供してきたというCoyaltix Carriage(コヤルティクス・キャリッジ)社の“名車”を名古屋の輸入馬車専門業者から買い取り、22日、ついに入庫式の日を迎えた。
20人ほどの関係者が見守る中、真っ白い優美な馬車が登場。さすがに馬はいないため、スタジオの中までは人の手で移された。シンデレラ役と王子役の男女モデルによるデモンストレーションもあり、スタジオは束の間、ファンタジーの空間と化した。
同社はこの馬車を撮影の演出道具として活用していく予定(有料)。井上社長は「コロナ禍で結婚式が挙げられず残念な思いをしている人、これから結婚を考えたい人、おひとりで馬車と撮影したい人…、どんな人でも歓迎します」と呼び掛ける。ちなみに購入金額は(ロマンが失われるから)秘密だそうです。
撮影プランなどはスタジオ神戸のサイト(http://studiokobe.jp/)で。