永瀬正敏がコロナの時代に考えた 映画のこと仕事のこと「一層手を抜けない」

石井 隼人 石井 隼人
主演作『二人ノ世界』が現在公開中の永瀬正敏(撮影:石井隼人)
主演作『二人ノ世界』が現在公開中の永瀬正敏(撮影:石井隼人)

ステイホーム期間中にもその思いは強くなった。ほとんど外出せず、自宅で映画ばかりを観る日々。「小津安二郎監督や成瀬己喜男監督の作品を観直して、なんて凄いんだ、なんて素敵なんだ、なんて凄いものを作っているんだと改めて感動。先輩方の仕事を通して、映画の光は絶対に消えないという勇気をもらいました。そして“もっと映画をやりたいな!”とも。演じたい気持ちが高ぶりました」とかつての映画青年の顔だ。

どんなピンチでも、それが大きなチャンスに転ずることだってある。「お客さんに安心して楽しんでもらえるものを作るにはどうすればいいのか。その模索はしばらく続くだろうけれど、世界中の映画人が手を取り合うだけではなく、配信、テレビ、演劇、音楽などボーダーレスに手を取り合えば、今の状況下だからこそ生み出せる新しい何かがあるはず」と期待する。

“新しい何か”のためにジャンルにとらわれることなく今後も活躍していきたい。しかしこと映画になると、新人のように背筋が伸びる思いがある。「俳優デビュー作が相米監督の映画の現場ですから、映画への思い入れはあります。しかもオヤジ(相米監督)からの評価は×と△しかもらえておらず、思わずOKと言わせるような役者になることを最終目的地点にしていました。でもそのオヤジが53歳で先に逝ってしまったので、これからも一生OKのもらえない、まあまあな役者でいるような気がしますね」。いくら作品を重ねてキャリアを積もうとも、気持ちはあの日の銭湯に置いてある。新たなことを書き込む余白はまだまだ十分ある。

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