永瀬が学生映画に参加するのは、実は今回が初めてではない。なら国際映画祭では学生映画部門の審査員を務めるなど、かねてから若い才能の発掘には意欲的だった。
「学生たちの熱意に突き動かされるというか、若い彼らこそが未来だからです。そんな彼らに頑張ってもらって今後の映画界を支えてもらう。“また未来で会いましょう”と別れて、プロの現場で彼らと再会する。それって凄く夢があることですよね」と相好を崩す。
学生たちとの撮影でしみじみ感じるのは「逆に僕が育ててもらっている」という新人時代に戻ったような感慨だ。「僕が劇中で使用する電動車イスを借りるのにもお金がかかります。しかし予算がない。学生さんはレンタル会社に何度も足を運び、必死に交渉し、借りてくる。スタッフだって一人一役ではありません。当時学生だったミズモトカナコさんは女優として出演しながら、出演シーンが終わると急いで助監督に変身。そんな姿を見ると“俺は役者だからな!”と言ってふんぞり返るのは違うだろうと思わされる」。
様々な現場を渡り歩いてきたプロとしての経験値と、これからの映画界を支えるであろう学生たちの純粋なまでの情熱が交わった結果生まれた『二人ノ世界』。撮影から約6年の時間を経て、ついに劇場公開される。
「僕としては“学生が頑張りました!どうぞ観てください!”という思いはありません。なぜならばプロが作ったものと少しも引けを取らない作品になっているからです」と完成度に太鼓判を押す。
劇場公開を願っていたのは、作品の完成度はもとより、当時参加した学生たちの熱意に光を当てたかったから。「6年間ずっと映画館で上映しなければダメだと思っていました。それは未来を担う彼ら彼女たちに“一生懸命やったけれどダメだったじゃん”と思ってほしくなかったからです。当時参加した学生さんたちには一生誇りに思ってほしいし、彼らが込めた想いを受け取った若い世代が“映画をやりたいな!”と思ってもらえたら。それこそ本望です」。未来にバトンを繋ぎたい。永瀬の想いはいくら時間が経過しようとも変わらない。