カナイくんは、徳島県の空き地で群れを作っていた野犬が産んだ子犬だった。野犬は警戒心が強く、子犬も人に慣れるのに時間がかかる。京都府に住む海老名さんは、セラピードッグのニライくんの二代目を探していた。カナイくんを見初めたが、カナイくんは知らない人を前にすると固まってしまうのであった。
空き地で暮らしていた野犬の群れ
徳島県のだだっ広い空き地で野犬の群れが暮らしていた。犬は何十匹もいて、その土地の持ち主や近所の人がえさを与えていた。2011年11月、14匹の子犬が産まれたという。2011年秋の繁殖シーズンは子犬がたくさん産まれたので、保護団体ハート徳島は子犬を優先して保護することにした。14匹の子犬も保護された。
私有地だったので、捕獲するにも土地の所有者に役所を通して立ち入り許可を得なければならず、交渉は難航したという。保護された14匹の子犬の中に真っ白でふさふさの毛をしたシュンくんがいた。
セラピードッグの後継犬を探して
京都府に住む海老名さんは、ニライくんというセラピードッグを連れて施設などを訪問していた。ニライくんは子犬の時に路上をうろついていたところを保護され、縁あって海老名さんのところにやってきた。
「子犬だったニライくんが6歳になり、そろそろセラピードッグの後継犬を育てたくて犬を探していたんです」
海老名さんは時折譲渡サイトで犬を探していたが、2012年1月上旬、シュンくんを見て心が動いた。
「人慣れしている明るい子だと書かれていたんです。黒や茶色の犬より白い犬のほうが怖がられないということもあり、セラピードッグに向いているのではないかと思いました」
セラピードッグにはなれない
1月19日、ハート徳島のボランティアがシュンくんを京都まで連れてきてくれた。生後2カ月半くらいになっていた。
人慣れしていると書いてあったが、実際に会ってみるとワーッと尻尾を振って喜ぶのではなく、緊張して固まっていた。シュンくんを部屋に残して、ボランティアさんと話をして戻ってきてもまだ固まっていた。
「フードを一粒ケージの中に入れ様子を見ていると、片目でちらっと見て少し動き出し、キョロキョロあたりを見回すと、フードを食べたんです。ケージから出すと尻尾を振ってくれました。ただ、野犬だったので警戒心が強く、いまでも知らない人が来ると警戒します。セラピードッグにするのは早々にあきらめました」
名前はカナイくんにした。最初は散歩に行こうとしても固まったまま動かなかった。エコバッグに入れて人気のない道を通り、公園のベンチに座ることを繰り返し、ならしていった。おもちゃで遊ぶのは大好き!ニライくんがボール遊びをしていると、つられて一緒に遊ぶようになったという。
海老名さんは、どうしたらカナイくんが幸せになれるのか考えた。「私は犬と一緒にアウトドアライフを楽しみたいので、川や海、山に一緒に行けるようになることを目標にしました」。セラピードッグにはなれなかったが、カナイくんは、海老名さんとの暮らしを満喫している。