真っ白な身体にサファイア色の瞳を持つ鳥。青い翼の上には街を載せ…こちらは陶芸作家・星野菜月さんの作品。物をしまえる鳥の「蓋物」です。内部には「金彩」という技術で描かれた、きらめく小宇宙のような空間が広がっているそう。現在、「ギャラリー恵風」(京都・丸太町)にて個展を開催中の星野さん。作品の持つふしぎな魅力について聞きました。
星野さんは東京出身で2011年京都精華大学陶芸コースを卒業。2013年に同大学大学院卒業後、陶芸家の道へ。同年行った初の個展では蓋物を多く出品し、場所も今回と同じギャラリーでした。
「置物」としての一面もあり、かつ「実用」を果たす、蓋物の在り方に学生時代から惹かれるそう。その後、様々な作品制作を経験し、今回は原点回帰ともいえる蓋物中心の展覧に。手のひらにおさまるものから、両腕で抱え込むほどのものまで、大小24点が揃います。
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――個展のコンセプトは。
今回は「船」「鳥」「生き物の背中に街がある」です。子どもの頃から鳥が好き。自由を想像させる、翼で飛んでいく姿の美しさに惹かれます。また亀の背中に世界が載っている、というイメージをやはり子どものころどこかで見て。ずっとそういう世界を表現したいと思っていました。今回のコロナ禍によるステイホームの期間中は、「自分が陶芸でしたいこと」をあらためて見つめ直し、制作する時間になりました。
――可愛いだけじゃない、どこか怖さもある作風ですね。
よく言われます。デフォルメして可愛いさだけ強調するのではなく、だからといってフィギュアとも違う…生き物が好きな人がグッとくるポイントを常に探しています。物語性も考えていて、命の怖さ、なまなましさ、もあった方がリアルさに繋がる気がします。
――陶芸の魅力は。
窯の中は一種のブラックボックス。中でどんな化学反応が起きるかは今だに謎です。中で作品が爆発してしまって、心が折れそうになったことも(笑)。…でも自分のコントロールを外れるからこそ、思いがけない素晴らしいものが生まれてくる。そこが好きです。
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星野さんは制作の際、自分の作りたいものを作るのは大前提として、その先のまだ見ぬ、持ち主の顔を考えているそう。「わたしの作品が手許に渡った方の日常を、豊かに、楽しく彩るものであって欲しい。コロナ禍の中、そんな祈りをこめてつくりました。ぜひ多くの人に手に取ってもらいたいですね」
◆星野菜月「鳥の方舟」展:6/16(火)―21(日) 12:00―19:00(最終日は18:00まで)
◆ギャラリー恵風:京都府京都市左京区聖護院山王町21-3
アクセス:http://g-keifu.com/access/