届かぬ大阪府の休業要請支援金…支給決定まだ2割「1カ月以上状況分からず」「支払い間に合わない」と悲鳴

広畑 千春 広畑 千春

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、自治体の休業要請に協力した中小企業や個人事業主に支払われる「休業要請支援金」。だが大阪府では殺到する申請に人手が足りず、9日時点で支給決定されたのはわずか1万9千件。書類審査済みを示すホームページの「協力施設一覧」へ反映された件数も2万2千件余りに止まっている。番号で処理状況を追跡するシステムもなく、家賃などの支払いに当てようと見込んでいた飲食店などからは「1カ月以上経っても給付どころか、書類が受け付けられたかすら分からない」という悲鳴が上がる。

 大阪府の休業要請支援金は飲食店を始め、府が休業要請を出した施設が対象。府と市町村が折半し、中小企業に100万円、個人事業主に50万円を支給する。ネットで受付番号を取得し申請書を取り出した上で、必要書類を添付し郵送。ネットでの受付番号配布は5月末で終了し、ホームページでは「不備不足が無ければ、申請から3週間程度で指定口座に振り込む」と説明している。

 だが、あるスナック経営の女性は「1日に書類を送り、2日には送達確認もできたが、いくら待ってもなしのつぶて」。月末の家賃や諸経費の支払いが迫る中、府に問い合わせても「協力施設一覧に掲載されるか、不備があれば返送されるので待って下さい」との説明が。その後、ホームページが更新されるたび市町村と店の名前のみが記された数千件の一覧を確認し続け、6月初旬にようやく掲載された。支給はもちろん、まだ。受付初日に届くよう送った知人のバー店主も同様という一方で、書類不備で返送され、再申請した人が既に入金されているケースも。女性は「受付番号があるのだから、せめてオンラインで処理状況を把握できるシステムがあれば、取引先にもきちんと説明できるのに…」と話す。

 府の中小企業支援室経営支援課によると、ネットでの受付総数は約6万4千件で、6月7日までに書類が届いたのは約5万件。全庁から応援を受け約200人(5月時点)の職員が書類を確認し、問題なければ「協力施設一覧」に掲載し、支給対象に当たるかなど最終的な判断を経て支給手続きに入る。

 担当者は「不備や不足が何もなければ3週間程度で入金できる」とするが、実際は「書類や記入事項をチェックするだけでも、1件当たり少なくとも数十分はかかる」。さらに、契約書の名義が異なる▽様式が微妙に違う―など判断が難しい場合は受理可能か返送かを審査するチームに回り、弁護士に問い合わせることも。再申請が必要と判断されれば、記入の仕方や注意点を一件一件記して返送しているという。

 また、二つのチームは別々の庁舎で作業をしており「一つの案件が今どこにあるかを確認するのは難しい」といい、遅れについて「ここまで個別案件が出てくるとは予想していなかった。受付番号で処理状況を把握できるシステムを組む時間もなかった」と担当者。協力施設一覧に載ればひとまず書類上の審査は通っているため「支給決定されれば、比較的すみやかに入金できると思います」とする半面、5月末から新たにNPO法人など休業要請外施設向けの新たな支援金受付も始まり、職員を二手に分けて対応している状態で、「できるだけ早く作業を進めているつもりだが、限界もある」と話す。

 緊急事態宣言が解除されたとはいえ、第2波も懸念される中、夜の街の賑わいは戻っていない。前出の経営者の女性の周囲では、府の休業要請支援金があるからと政府系金融機関の特別貸付を申請しなかった人や、先行きの不透明さで店を閉めることを検討する経営者も。「再開しても火の車だし、状況が分からなければ次のステップにも進めない。『もらってるはずなのに』と疑われることもあり、知事や府は『補償をやる』という良い内容だけでなく、手続きや支給の遅れ、人手不足など、現在の状況もちゃんと説明してほしい」と訴えている。

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