「えのしごとについていますか? そうだといいな。そうだといいな。
まあ。ほかのでもいいけどね。。。いまのじぶんでがんばって★」
発売から6週間で、全世界で1341万本を売り上げるなど、コロナ禍のステイホーム中に記録的ヒットを上げる任天堂のゲーム「あつまれどうぶつの森」。そんなブームが引き寄せた、ある女性画家への約15年前の自分からの手紙が、多くの人の心を揺さぶっています。
「いろいろあったけど、無事画家になったよ」。今月4日、”手紙”の写真とともに、そんな”返事”をつぶやいたのは、北海道を拠点に活動する晴夏(@_harenatsu)さん。ネオンライト輝く夜の街が雨に濡れたような印象的な色使いで描かれた作品は、独特の透明感や世界観を持つと人気を集めています。ツイートは瞬く間に22万を超える「いいね」を集め、「泣いた」「いまのじぶんで…って優しい」「夢は叶うのですね」「どうぶつの森がタイムカプセルになった」との声が続々と寄せられています。
晴夏さんによると、「おいでよ―」で遊んでいたのは、今24歳の晴夏さんが小学生だった頃。幼なじみと通信して遊んでいたといいますが、成長とともに部屋にしまい込んだままになっていたそうです。再会したきっかけは、最近「あつまれどうぶつの森」を購入してプレイしたこと。「『あつまれ』は『おいでよ』からどう変化したのか気になって…」といい、久しぶりに実家に戻って探し出して開けてみたところ、この手紙が届き「ひとりで感動してしまった」と言います。
手紙=「メッセージカード」は、ゲーム中に島(村)の住民や未来の自分に当てて送れるもの。任天堂広報室は「未来へは時間を設定して送るのですが、リセットや機械が壊れない限り残るはずです。ただ本来はもう少し近い将来だと思いますし、15年という長い年月を超えて…というのもあるんですね」と話します。
晴夏さん自身、「手紙を出したことは全然覚えていないんです。というか、書いたことすら覚えていないくらい、『おいでよ』の記憶がほとんどなくて…」。ですが、「4歳から絵画教室で絵を習い始め、物心がついた頃には、すでに画家を目指していました」と振り返り、「小学生の頃、唯一自分から『やりたい』と言ったのが絵でした。道ばたでも家でも時間を忘れて描いていました」。
その後、美術の高校に進学するも中退し、美大などではなく映像系の専門学校へ進学。「高校を辞めたことも映像の専門学校へ進学したことも夢を諦めるためではなくやりたい事をやるためにとった行動です。『絵をあきらめる』というのは選択肢にすらありませんでした」。周囲が就職活動をする中でも就活はせず、フリーランスの画家として昨年4月に開業し、丸1年がたちました。
今はオーダーで人物画や動物・静物画を描くほか、手帳の罫線にカエルなどがぶらさがる、どこかユーモラスな「罫線で遊ぶ小動物」シリーズや、グラスや指輪の石など絵の一部をくり抜き景色が”絵”になる「君と見た景色に染まる」シリーズも。服や鞄、身体にまでキャンバスを広げたり、音楽と融合したライブパフォーマンスを開いたりと活動の幅をどんどん広げています。
「明日も100%生きていると言える人なんていない。だからやりたいことは今やって、伝えたいことは今伝えたい。もし80歳になってバンドを組みたくなったら、その日のうちに音楽の勉強を始め、仲間を探し始めるつもりです」と晴夏さん。
「高校生になっても専門学生になって就活が始まっても画家になると言って聞かなかった私を多くの大人が心配してくれましたが、私は画家を目指していたあの頃も画家になった今も毎日とても幸せです」。今回話題になったことについて「これを機に将来に不安を抱えるお子様や現在何か悩みを抱えている大人の方の心が少しでも軽くなったら嬉しい」といい、こう呟きました。
「また15年後の私にメッセージを送るなら、『絵の仕事を続けていて欲しい気持ちもあるけど、気にせず今やりたいことで頑張って』と、同じことを伝えたいです」