飼い主を探していたのか淋しかったのか、銀行の駐車場の片隅で、大声で鳴いていた黒猫の子猫、金時くん。保護主の吉田さんは、たまたま先代猫の誕生日に金時くんを保護した。首輪をしたきれいな猫だったので誰かが飼っていたはずだが、3カ月経っても飼い主が見つからず、吉田さんが飼うことになった。
首輪をつけた黒猫の子猫
2017年6月10日の朝、埼玉県に住む吉田さんは、会社に出勤して窓を開けていた。どこかから大きな猫の鳴き声が聞こえてきたので、気になって探しに行くと、会社の隣にある銀行の駐車場に1匹の子猫がうずくまっていた。
黒猫の子猫だった。飼い猫なのか首輪をしていたが、周囲に飼い主らしき人の姿は見当たらなかったという。
当時、吉田さんが勤める会社の敷地には、20匹くらいの野良猫がいた。同僚や周囲の商店の人たちなど、みんなで可愛がっていた。名前をつけていた猫もいた。どんな猫がいるのかよく知っている人がいたので、吉田さんは、黒猫の子猫に心当たりがないか聞きに行った。他の商店や地元の会社の人にも尋ねたが、誰もこの猫のことを知らなかった。
縁あって保護したのかもしれない
会社の隣の喫茶店にも「猫のことを知らない?」と聞きに行くと、近隣で整体院を営む整体師と出入り口ですれ違った。その人は付き添いの人がいないと歩けない盲人だったが、「猫?きれいな子だ」と言い、「いいおうちが見つかって良かったね」と続けた。
吉田さんは、ふと6月10日は先代の猫の誕生日だったことを思い出した。
「もしかしたら、この子は縁あって私と出会ったのかもしれない。飼い主さんが現れなければ、里親を探すのではなく私がこの子を飼おうと思いました」
翌日は日曜で仕事が休みだったので、吉田さんは黒猫を連れて帰ることにした。動物病院に寄ると、生後3カ月くらいで、ノミもダニもついておらず、猫エイズでもなかった。飼い猫なら動物病院に探しに来るかもしれないと思い、貼り紙をしてもらったそうだ。
飼い主が現れず我が子に
子猫を家に連れ帰ると、シャーっと言って隅っこに隠れてしまった。しかし、プードルの十三(じゅうぞう)くんは動物が好きで、子猫に一緒に遊ぼうと近寄って行った。もう1匹のプードル、五十六(いそろく)くんは、子猫を見守る感じで、先住猫のゆのちゃんは、我関せずだった。
名前は、金時くんにした。
吉田さんは、3カ月くらい猫の飼い主を探したが、結局見つからなかった。
「時間が経てば経つほど愛着がわいて、飼い主さんが現れても手放しにくくなると思いました。普通、飼い猫がいなくなったら必死で探すでしょうけど誰も現れない。もしかしたら捨てられたのかもしれません。9月頃、金時をうちで飼おうと思いました」
金時くんは甘えん坊で、特にご主人に懐いている。寝室のドアを閉めて寝ようとすると、中に入れてくれとドアを爪で引っ掻いて鳴く。中に入れるとご主人にぴったりくっついて寝るそうだ。ご主人がソファに座るとひざの上に乗るそうだ。