新型コロナウイルスの感染歴を調べる手段として、抗体検査がある。6月1日には、厚生労働省が東京、大阪、宮城の3都府県で計約1万人の血液を採取し、無症状者を含む感染者の割合を調査するための大規模な抗体検査を開始。折しも同日、職場で抗体検査の機会が設けられると聞き、物は試しと志願してみた。
検査場所は神戸新聞本社の会議室。神戸国際医療連携クリニック(KICC)院長の福島和人さんと看護師がキットを持ち込み、私を含む有志13人を検査してくれた。
検査自体は簡単で、指や腕から採った血を板状のキットに1滴ずつ垂らし、線が浮かび上がる様子をチェックするだけ。福島さんによると、感染から概ね2週間程度でIgMが、概ね1カ月以上でIgGが陽性になるといい、もし感染歴があればそれを示す線が出現するそうだ。「ん?この場でIgMの陽性が判明したらどうすんの?即帰宅からの自宅待機?」。説明を聞いているうちに、今さらながら急に怖くなってきた。
そんな思いをよそに、検査は淡々と進む。微量の血を採り、IgMとIgGを調べる窪みにそれぞれ滴下。緩衝液を加えて数分待つと、じわじわと赤い線が。陽性であれば線がもう1本出てくるらしいが…「はい、IgM、IgG、いずれも陰性ですね」。感染の心当たりは特になかったとはいえ、医師に陰性だと言ってもらえるとやはり嬉しい。ありがとう、いろいろ自粛してきた自分。
さらに私だけ特別に、肺炎などの炎症を調べる「CRP」、心筋障害や心筋炎の指標となる「トロポニンT」、血栓症を診断する「D−ダイマー」の検査も体験。いずれも先ほど採取した血液から調べることができ、幸い、全て正常値だった。本当にありがとう、自分。
結果は13人全員が陰性。それでも福島さんは「抗体検査の結果だけで『感染していない』とは断言できません。感染リスクを考えて、今後も濃厚接触や“密”を避けて慎重に生活してくださいね」と念を押す。
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KICCでは5月1日から抗体検査をスタート。外来のほか、依頼のあった幼稚園などに出向き、これまで計100人ほどを検査してきた。その結果、無症状でも陽性だった人が数人いたといい、特に感染初期のIgMで陽性を示した人には、すぐにPCR検査が受けられる機関を紹介したという。
抗体検査の意義について、福島さんは「症状が出ていない感染者を拾い上げることで、自宅待機やPCR検査などにつなぐことができ、結果的に職場感染などのリスクを軽減することができます」と説明する。
KICCは10人以上の職場を対象に出張検査も請け負っている。抗体検査は1件当たり1万5000円(税込み)。10人未満の場合は要相談。KICC(TEL:078-221-5777/FAX:078-221-7077)
■KICC https://kicc-medical.jp/